出雲に日光、名所に続々ショップをオープンする「ビームス」が目指す地方創生とは

2023/07/07 05:57
堀尾大悟
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海外に向けてきた視点を「国内」に向ける

 ビームスの設楽洋社長がある日、イギリスの伝統ある仕立屋に赴いた。貴重な100年前の生地サンプルに魅せられてテーラーに「これはすばらしいシルクですね」と語りかけたところ、返ってきたのは思いもよらぬ一言だったという。

 「そのシルクは、日本の着物の素材ですよ」

 これまでアメリカをはじめイギリス、イタリアなど海外のファッションやカルチャーを日本に紹介してきたビームス。しかし、本当にいいものが、実は足元にたくさんあった――その設楽社長自身の体験から、これまで海外に向けてきた視点を「国内」に向け、多くの日本人が気づいていない、あるいは忘れてきた伝統や文化に光を当て、その魅力を発掘するプロジェクトとして「ビームス ジャパン」は立ち上がった。

 2016年、もともとビームスの大型複合店だった新宿の「ビームス ジャパン」を、同名を引き継いだ新プロジェクトを束ねる旗艦店として6フロアを改装。以来、渋谷、京都と3店舗を展開しながら取り扱うアイテムを増やしていき、ビームスを代表する事業の一つに成長させてきた。

 ところが、その成長の過程で「今の取り組みだけで、日本のいいものを本当に発信できているのだろうか? と疑問を抱くようになった」と、カスタマーエンゲージメント本部 BEAMS JAPAN GATE STORE プロジェクトマネージャーの鈴木春幸氏は打ち明ける。

カスタマーエンゲージメント本部 BEAMS JAPAN GATE STORE プロジェクトマネージャー
カスタマーエンゲージメント本部 BEAMS JAPAN GATE STORE プロジェクトマネージャーの鈴木春幸氏

 「全国の隠れた銘品を発掘し紹介するのであれば、都会だけで発信するのでなく、もっと地域に入り込み、地元の企業や事業者とスクラムを組みながら事業展開していく必要があるのではないか、という反省があった」

 そうした反省からテストマーケティングを兼ね、宮島(広島県)や善光寺前(長野県)など国内4か所の名所景勝地で実験的にポップアップショップを出店してみた。

 すると、観光客を中心に好調な集客を実現。各名所のロゴをあしらったオリジナルグッズの売れ行きも好調で、テストマーケティングとしては一定の手ごたえを得た。

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