成長に黄信号 生鮮宅配の王者・生協「次の一手」とは!?=日本生協連 嶋田専務
全国で約2000人の配送員が足りない
──生協宅配では人手不足でどのような問題が生じていますか。
嶋田 19年度は、採用難により欠員の補充が計画どおりに進んでいません。実は前年度と同程度の経常剰余金が維持できているのは、これによる人件費の減少も理由の1つです。
なかでも人手不足が深刻なのが、宅配事業の根幹を担う配送部門で、全国の生協で2000人以上の人員が不足しています。配送業者も同様に人手不足で、外部委託によって欠員を補うのも難しいのが現状です。当面、間接部門の職員を優先的に配送部門に充てていますが、これによって生協への新規加入者獲得のための活動が十分に展開できず、事業の持続的な成長に影響を及ぼすおそれがあると懸念しています。
──配送における人手不足対策ではどのような施策を打っていますか。
嶋田 生協宅配の最大の強みは、組合員との接点です。毎週、同じ職員が組合員と対面でコミュニケーションを図ることで信頼関係を育んできました。しかし配送部門で欠員が増えたり、配達職員の定着率が下がったりすると、その接点が薄れてしまいます。
これを防ぐために、配達職員の労働環境の整備や、業務負荷の軽減を進めています。たとえば、配送用車両の運転しやすい軽自動車への切り替えや、配送ルート再編による走行距離の短縮、カーナビゲーションシステムと連動した配送支援システムの導入などに取り組んでいます。
人工知能( A I )や情報通信技術(ICT)といったIT技術も効果的に活用していきたいと考えています。たとえば、購買動向分析をもとに各組合員のニーズに沿った提案が行える支援システムを導入すれば、配達職員の能力や習熟度にかかわらず、組合員との接点を強化できるようになります。
──配送の効率化のために、ほかの事業者との共同配送を始める考えはありますか。
嶋田 大手ビールメーカーが商品の共同配送を開始するなど、さまざまな業界で配送の共同化が広がっています。将来的には生協でもありえるでしょうが、生協宅配の生命線とも言える“組合員との接点”としての配送を維持するために、まずは地域生協間での共同配送を進めるべきです。具体的に話が進んでいるわけではありませんが、マテリアルハンドリング機器のサイズ統一や、配送管理システムの共通化などを実現させれば可能であり、生協として生産性向上を図る余地はまだまだあると考えています。