病気から復職した社員を閑職に追いやり「危険分子」の監視役をさせる大手メーカー
多くの社員が会社を信用しなくなる恐れがある
今回の事例は、以前は部下を潰していたが、部下への指示の仕方を変えたことで育成に成功しつつあるケースといえよう。この事例から、私が導いた教訓を述べたい。
こうすれば良かった!①
復職者に適切な配慮を
脳梗塞から復職するのは、様々な意味で苦労が伴うといわれる。本来は、会社としてスムーズに復職できるよう、可能な限り適切な配慮をすべきなのだが、必ずしもできていない場合もあるようだ。
特に目立つのは、閑職に追いやるケースだ。おそらく、そのまま在籍しても、元の状態に戻る可能性は低いと判断し、辞めるように仕向けているのだろうか。賃金などコストを払う側からすると「止むを得ない」という判断なのかもしれないが、少なくとも道義的な問題や責任は残る。
そして考えるべきは、社内でこの事例を何らかの形で見聞きしている可能性が高いということだ。
それがいずれ、社員たちの意識に多少なりとも影響を与える。やがて、大きな負のエネルギーとなり、会社への不信やあきらめになりかねない。これが、業績難や労災の事故、労使紛争になることがある。
こうすれば良かった②
社会常識を逸脱した行為は直ちに止めるべき
今回の事例でさらに深刻な問題であるのは、会社と争った男性社員の監視をさせていることだ。このようなケースは、私がヒアリングをしていると時折、耳にする。会社にとって危険な社員の監視を厄介者扱いしている社員にさせることで、双方が精神的になえて、自滅し、辞めるのを狙っているのだと私は考える。これももしかすると1つの管理手法なのかもしれないが、私には解せない。やはり、社会常識を逸脱したものであろう。少なくとも、脳梗塞から復帰した社員に適切な対応をしているとは言い難い。
会社と争った男性社員への対応にも、問題がある。これは退職勧奨を通り越した退職強要であり、不当な行為といえよう。法令順守の観点からも、直ちに止めるべきだ。このような行為の積み重ねが意味するものをあらためて考えるべきではないだろうか。
神南文弥 (じんなん ぶんや)
1970年、神奈川県川崎市生まれ。都内の信用金庫で20年近く勤務。支店の副支店長や本部の課長などを歴任。会社員としての将来に見切りをつけ、退職後、都内の税理士事務所に職員として勤務。現在、税理士になるべく猛勉強中。信用金庫在籍中に知り得た様々な会社の人事・労務の問題点を整理し、書籍などにすることを希望している。
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