柳井正が語るユニクロ「働き方改革」の真価
柳井正の座右の銘
「企業は欠乏によって滅びるのではない、過剰によって滅びる」
これは私の座右の銘としている1つであります。
好調なときほど気を引き締めないといけない。うまくいくときは少しの努力で大きな成果が出るときもあります。どこまで自分の実力なのか、勘違いしやすくなります。組織にそういう雰囲気が出ると転落するのはあっという間です。経営環境が厳しいときは、人もお金もそうなりません。自然と気を引き締めるので、そういうことは起こりにくいと考えます。
企業は欠乏によって滅びるのではなく、過剰によって滅びる。
これは長年にわたり、経営してきたなかで身をもって実感したことであります。
ファストリのビジネスの原点
「ライフウェア」とは
最後に、われわれのビジネスの根底にあるライフウェアというコンセプトについて説明します。
昨年8月、スウェーデンのストックホルムに北欧初めての店舗をオープンしました。オープン当日、千人以上のお客さまが列をつくり、大成功。現地の人々に暖かい評価を得ています。ストックホルムの出店を機会に、今年1月、ユニクロはスウェーデンのオリンピック委員会とパートナーシップを結び、メーンパートナーとして、選手のユニフォームを提供することになりました。
ユニクロは今後4年間にわたり、2020年の東京五輪、22年北京五輪の競技大会で、スウェーデンの代表選手団にユニフォームを提供することになりました。既存のアイテムに合わせ、選手団専用に特別にデザインしたアイテムの提供を開始します。スウェーデンの皆様を応援したいという気持ちから契約の締結にいたりました。今後とも両国の相互理解、関係強化に貢献したいと思います。
ライフウェアは人々の生活を豊かにする、美意識を持ちながらシンプルで上質、細部への工夫に満ちている、生活ニーズから考え抜かれた進化した普段着であります。世界中の人々が気軽に買える、自らのライフスタイルをつくる道具であります。そのような服を私たちはライフウェアと呼んでいます。創業時から大事にしてきた私たちの服に対する考えを、社内外の多くのクリエイターと議論を重ね、ライフウェアのコンセプトに結実しました。
ライフウェアに関する世界での評価は飛躍的に高まってまいりました。
昨年9月、パリのファッションウィークで展示した、ライフウェアのコンセプトを最もわかりやすく体現しています。ニットウェアを中心に、匠の技、デザイン、品質を公開し、ユニクロのニットウェアがいかに唯一無二のものかを証明しました。世界各国のメディアや一般市民が来場され、大盛況でした。
最も注目されるデザイナーの1人、ロンドン出身のJWアンダーソンさんとコラボレーションし、17年から展開し始めました。商品の完成度が非常に高く、最近発表した19年春夏のコレクションは発売初日に英国および欧州全体のEC売上の半分を占めるほど大成功しました。
彼が今回のユニクロとコラボした意義は、ファッションを民主化するということです。私たちがめざしているライフウェアを通じて、服の民主主義を実現したい、という考えととても近い。だから私たちはあってすぐ投合し、コラボレーションが決まりました。
服を変え、常識を変え、世界を変えていく
「服を変え、常識を変え、世界を変えていく」。
これは毎回お伝えしていることですが、私たちのすべての出発点がここにあります。従来の概念を覆し、まったく新しい服をつくり出す。それによって、人々の暮らしをもっと楽しく、快適で便利なものにするライフウェアのコンセプトのもと、すべての才能や技術を持つ世界中の個人や企業と協力し、世の中に例のない、まったく新しい産業を生み出し、よりよいよりよい社会の出現に貢献する。
これからもご支援をお願いいたします。