エディー・バウアー異例のスピード再上陸!“仕掛け人”水甚社長が描くブランドイメージ大転換
アウター製造技術を活かしたブランドビジネスに強み
1949年に岐阜県羽島郡笠松町で創業した水甚は、カジュアル衣料全般を企画、製造するアパレルメーカー。スラックス工場からスタートし、イオンなどの総合スーパー(GMS)やしまむらなどのプライベートブランドのOEM生産などで成長してきた。とりわけダウンジャケットをはじめとするアウター衣料の製造技術に強みを持ち、他のアパレル企業に羽毛の販売も行っている。
加えて、同社の特徴は「ファーストダウン」「アーノルド・パーマー」「ヘンリー・コットンズ」など5つのアパレルブランドを、卸売と小売の両面で展開するブランドビジネスにある。
1997年、米国のストリートシーンから人気に火がついたアウトドアブランド「ファーストダウン」とライセンス契約を締結。同ブランドのダウンジャケットは当時のストリートファッションにブームをもたらした。10年後の2006年には同社から商標権を取得している。
2020年には、経営破綻したレナウンから引き継ぐ形で「アーノルド・パーマー」のライセンス使用権を獲得。全国に70店舗の直営店を展開し、ECも強化するなど、同ブランドを再び軌道に乗せている。
そのブランドビジネスを主導してきたのが、2005年に創業者からバトンを受け継いだ現中村社長だ。「製造品質の強みは大事にしたいが、OEMの受注生産だけでは時々のトレンドや発注元の意向に左右されてしまう」との危機感から、ブランドの製造から販売までを手がけ、自社でコントロールできるブランドビジネスに乗り出し、その比重を高めてきた。
このようにアウター類の技術を活かしたブランドビジネスを経営の主軸とする水甚にとって、エディー・バウアーは魅力的なアウトドアブランドの一つだった。
1920年に創業したエディー・バウアー。1936年には世界初のダウンジャケット「スカイライナー」を開発。1953年に発表した「カラコラムダウンパーカー」は、K2の初登頂に挑戦する米国人登山隊を支えるなど、実は米国最古のアウトドアブランドとしての歴史がある。
「102年の歴史は、お金では買えない価値がある。ダウンジャケットを得意とする当社との親和性も高いと思った」(中村社長)