新MDに手応え!食品メーカーと生鮮食品の商品化に取り組む=サミット田尻 一 社長
値下げ原資は生鮮と総菜で稼ぐ!
──商品を低価格で販売するための原資はどのように捻出するのですか。
田尻 当社は都心部に店舗を展開していますから、販売管理費がほかのSM企業よりも高く、それをカバーするために粗利益率をある程度高く維持しなければ事業が成り立たない構造があります。販売管理費は圧縮せざるを得ませんが、投資を含めてムダな出費を減らし、それを原資にグロサリーの値入れ率を下げます。
競合他社の強力なプライベートブランド商品には、オール日本スーパーマーケット協会(大阪府/荒井伸也会長)の「生活(くらし)良好」で十分対抗できると考えています。ナショナルブランド商品については、競合店と売価を比較されやすい商品を中心に地域の実勢売価にしっかり値合わせします。
──販売管理費低減以外に値下げの原資はありますか?
田尻 生鮮食品や総菜の売上構成比を高めて粗利益額を増やし、増加分をグロサリーの値下げ原資に回します。そうすることで粗利益率を一定に保つことができると考えています。
先ほど“ボーダーレス”競争について話しましたが、その対策として生鮮食品や総菜を今まで以上に強化しようということで出店したのが11年10月開業の成城店(東京都世田谷区)です。
──成城店には新しいMDを数多く導入しました。11年11月にはテラスモール湘南店(神奈川県藤沢市)、同じく11月には横浜岡野店(同横浜市)と、新MDを導入した店舗を相次いで開業しています。12年1月~2月にかけてオープンした売場面積350坪の2店舗にも新MDを採り入れています。
田尻 そうです。まだまだ実験段階であり、ブラッシュアップしながら検証しているところです。新MDでは、加工度を高めた生鮮食品をはじめ、半調理品や完成品である総菜の販売に取り組んでいます。生鮮食品の加工度を高めて「食事の材料の提供業」の機能を強化していくことでしかSMとして生き残ることはできないと考えています。
──半調理品や総菜の商品開発はどのように行っているのですか。
田尻 今のところ食品メーカーさんとタッグを組みながら商品開発しています。
たとえば先日、あるメーカーさんから豚バラ肉を素材として使う簡単便利な即席調味料が発売されました。豚バラ肉を10枚ほど重ねてミルフィーユ状にし、フライパンでたれとあえて炒める商品です。
当社の精肉部門の担当バイヤーは、その即席調味料に使用されるミルフィーユ状の豚バラ肉を商品化しました。ある店舗で販売したところ、土曜日と日曜日の2日間で65パック売れました。通常の豚バラ肉も15%ほど売上が伸びていますし、担当バイヤーは手応えを得たと思います。
──食品メーカーが販売する即席調味料にあわせるかたちで生鮮食品の加工度を高める。
田尻 そうです。逆に食品メーカーさんが事業を拡大できるヒントがそこにはあると考えています。
生鮮食品は、単純に素材を提供するということではなく、関連するグロサリーにあわせたかたちでSKUを揃えていく。それによって相乗効果を発揮して売上を伸ばせると考えています。
──その延長線で考えれば、野菜や生肉、たれなどを1つのパックにまとめた「キット化商品」の開発も視野に入ります。
田尻 そういうことも当然あるでしょう。素材を売るための1つの方法だと思います。素材を総菜にするような部分では、キット化にご協力してもらえるようなお取引先さまを探していくことになります。これこそまさに「製・配・販」の三位一体の取り組みではないでしょうか。