震災後はいっそう、価格志向と提案力が求められる時代になる=ヤオコー 川野清巳 社長
──災害対策マニュアルはありましたか?
川野 用意はありましたが、振り返ってみればあまり役には立ちませんでした。新潟県中越地震を経験した原信ナルスホールディングス(新潟県/原和彦社長)さんや関西の企業さんからも経験談を伺っていました。しかし、いざ実際に震災が起きてみると、安否確認ひとつ取っても混乱がありました。
ただ、それでも思ったよりはうまくいったと思います。お客さまの退避や、社員の就業といった問題にも、店長たちはきちんと対応してくれましたから、根本的な部分ではうまくいきました。
内食が増える今こそミールソリューションを
──震災から2ヵ月以上が経ち、首都圏は日常を取り戻しつつあります。
川野 震災1週間後くらいに気になったのは、従業員の高揚している気持ちを抑えなくてはいけないということでした。「使命感」が強くなるあまり、アドレナリンが出すぎてしまうんですね。ふだん冷静な店長だって、開店前からお客さまが200人も並んだら落ち着いてはいられません。
確かに震災後のSMは、お客さまのライフライン機能を担いました。しかし当社の店舗展開エリアは、東北地方ほど甚大な被害を被ったわけではありませんから、東北とは事情が違います。
お客さまはご家庭で食事をしていますから、SMは毎日の食事に変化を提案しなくてはいけません。店舗には「早く従来の提案型の売場に戻せ」と指示していました。
震災後は自宅待機をする企業もありましたし、残業を避ける動きもありました。家族が揃って食卓を囲むとなれば、夕食の用意をする主婦も少し“腕まくり”をするでしょう。だからこそ、提案型の売場が必要なんです。