店舗にMDや売価設定の権限を移譲、個店経営で良質スーパーを追求=東武ストア宮内社長
──2011年2月期連結決算は微減収大幅減益になりました。
宮内 一言で表すと「リーマンショックのしわ寄せが一気に出た決算」でした。景気低迷による売上減少を挽回するために打った策がほとんど機能しなかったことが原因です。
一例を挙げるなら、競合店との差別化を図るために実施していた「高鮮度宣言」です。たとえば刺身は売場に並べてから4時間を経過すると値引き販売し、8時間後には廃棄すると宣言しました。その結果、何が起きたのかと言えば、店舗は値下げロスや廃棄ロスが発生することを恐れて商品をつくらなくなってしまいました。売場に商品が並ばなくなるわけですから、売上は減少し、粗利益額も大きく減らしてしまいました。
また、リーマンショック後、大手小売業は低価格プライベートブランド(PB)商品を相次いで発売、拡充しました。当社には電鉄系小売業が加盟する八社会(東京都/木下雄治社長)のPB「Vマーク」商品がありますが、売価が決まっているPBをさらに低価格で販売することはできません。
だから認知度が低いメーカーの低価格商品を導入しました。しかし、集客に結びつかず、売上を減らしてしまった店舗が続出しました。導入した商品はもともと値入れ率も低く、結果的に粗利益額を大きく減らしただけでした。
さらに、ちょうど改修期を迎えていた大型店が6店舗ありましたので、総菜部門の厨房拡充などをはじめとした生鮮強化型の改造を施しました。しかし、店舗オペレーション上、人件費が大幅に増加し、売上が大きく伸びなかったこともあって利益を大きく減らしてしまいました。
このようにリーマンショック後に打ち出した施策がことごとく機能せず、裏目に出てしまったのが11年2月期の決算でした。12年2月期は、前年下期から利益が改善してきたこともあり、増収増益を計画しています。
「高鮮度宣言」とMDを見直す
──10年5月に社長に就任してからは政策の軌道修正をしているのですか?
宮内 そうですね。「高鮮度宣言」は社長就任直後に見直しの方針を打ち出し、7月から取りやめています。店長会議で説明するなど、1ヵ月ほどかけて「なぜやめるのか」を周知徹底しました。
すると11年2月期上期には対前期比5.4%減だった売上高が、下期は同2.1%減と3.3ポイント(pt)改善しました。粗利益率は上期の22.3%から1.2pt改善し、下期には23.5%となりました。前述した負のスパイラルからは抜け出せたと考えています。
また、MDについても見直しました。当社は品揃えについて、競合店が取り扱っていないような高質商品を「金」、NB(ナショナルブランド)商品を「銀」、PB「Vマーク」商品を「銅」と呼んでいます。リーマンショック後から品揃えした、認知度が低いメーカーの低価格商品に「鉄」と名づけていましたが、この「鉄」の取り扱いをやめました。その結果、客単価は徐々にではありますが上昇傾向にあります。