ギャル系ファッションの雄「バロックジャパンリミテッド」は、いかに飛躍したか?
商品を作りこみ、アイテム数を削減
コロナ禍は、バロックにとっても大きな転機になったが、村井社長は、「既存のビジネスモデルを見直し、よりサステナブルなエコシステムに作り変えることができた」と話す。その成果の一つが、在庫の削減だ。
同社は、もともと多品種少量型のMDだったが、コロナ禍でアイテム数をさらに絞り込み、仕入れを前期比約20%圧縮したという。
「モノづくりでは、1点当たりにかける労力が増えて、商品力を高めることができた。ウィズコロナでは、リアル店舗が閉まっていてもお買い上げいただけるような、魅力ある商品でなければならない。品揃えや数量が少ないと、“チャンスロス”が拡大すると言う人もいるが、売り切れ御免でもいいと思っている。実際に、当社では発売から1週間で、プロパー価格で売り切れるアイテムが続出している。確かに、売上は下がったが、コロナ禍でも利益は確保できた」(村井社長)。
また、サプライチェーンが寸断されたため、中国に集中していた生産拠点を、アセアンなどに分散させ、リスクヘッジも進めているという。
もう一つの成果が、デジタルシフトの進展だろう。EC化率は現在、18.7%までアップした。村井社長は、「さらに30%まで高めるのが目標」と説明する。例えば、同社のポイントアプリ「シェルターパス」は8月現在、240万ダウンロードに達している。また販売員が自身のSNS経由で自社のECサイトに誘導した場合、インセンティブを支払うといった取り組みも始めている。
デジタルネイティブの若年層にリーチするのに、ECは欠かせなくなった。ただし、村井社長は、「デジタルシフトとはいえ、あくまでもリアル店舗とECの二刀流。リアル店舗が主力であることに、変わりはない。オンラインとオフラインをシームレスにつないで、シナジーを発揮させるOMOが肝心」と強調する。
リアル店舗がインフラとして欠かせない理由の一つが、接客。渋谷109の「カリスマ店員」の伝統を受け継ぐ接客のスキルやノウハウは、同社にとって重要な経営資源だ。同社は人材育成にも力を入れ、能力に応じて25歳前後で店長、30歳前後でスーパーバイザーなど小チームのリーダーに昇格させるのが、キャリアパスの標準モデル。「器が人を育てると考えているので、早いうちから現場のリーダーを経験させる。また社員は全員、入社後にはリアルの店頭に立たせる」と、村井社長は言い切る。バロックの強さの源泉は、カリスマ店員を育てるリアル店舗にあるとも言えそうだ。