アクシアル リテイリング(新潟県/原和彦社長:以下、アクシアル)が5月6日に公表した2022年3月期連結決算は、売上高が2464億円、営業利益が同14.9%減の103億円、当期純利益が同14.6%減の70億円だった。
売上高については、期首より「収益認識に関する会計基準」を適用した影響で前期との単純比較ができないが、旧基準での売上高は同0.3%増と、実質的に過去最高を更新した。
減益着地も高水準の収益性を維持
新潟県長岡市を拠点に、北陸および北関東エリアにスーパーマーケットを展開するアクシアル。傘下には、原信(新潟県/原和彦社長)、ナルス(同)、フレッセイ(群馬県/植木威行社長)と3社のスーパーマーケット事業会社を擁しており、原信とナルスは新潟県を中心に、長野県と富山県に合計79店舗、フレッセイは群馬県を地盤に、埼玉県北部や栃木県東南部にも県境を越えて合計50店舗を展開する(2022年3月期末時点)。
23年2月期に入ってからは4月に「フレッセイ朝日町店」(群馬県前橋市)、5月に「原信安曇野店」(長野県安曇野市)を出店しており、22年7月現在、グループの総店舗数は131店舗となっている。
粗利益率こそ、20%台と一般的なスーパーマーケットと同水準ではあるものの、売上高営業利益率は4.2 %(22年3月期実績)と、高収益として知られるヤオコー(埼玉県/川野澄人社長、同4.5%)に匹敵する高水準となっている。アクシアルが経営指標として重視するROA(総資産経常利益率)も9.5%と、前期から2.3ポイント下回ったものの、長年にわたり高い水準を維持している。
コスト高背景に23年3月期も減益着地を予想
アクシアルの22年3月期は、売上高がほぼ横ばいの着地となったが、前期の巣ごもり消費に対する反動減があったことを考えると、まずまずの業績といってよさそうだ。コロナ影響を受ける前の20年3月期と比較すると、売上高は6.7%増も伸びている。
利益面については、売上総利益はほぼ横ばいだったが、人件費が同1.4%増となったことに加え、販売費(同2.0%)や店舗費(同4.9%増)も増加傾向にあり、営業利益を圧迫した。
もちろんそれに対して手をこまねいていたわけではなく、期中は生産性向上にむけたTQM(総合的品質管理)活動の推進、経費支出決済ルールの厳格化、レジオペレーションの効率化、コストカット委員会の活動強化などに取り組みコストダウンを図ってきた。それらの取り組みは一定の成果を得られたとのことだが、一連の販管費増を補うまでには至らなかった。
23年3月期の業績予想では、売上高が対前期比0.4%増の2475億円、営業利益が同4.9減%の98億円、当期純利益が同13.8%減の61億円を見込むアクシアル。
エネルギー価格の高騰に伴う電気料金や物流コストの上昇などが利益を圧迫し、各段階利益は2期連続の減益着地となる予想で、売上高営業利益率も4%を割り込む見通しだ。
今期は「種蒔き」に注力?
アクシアルでは、経営環境の変化に応じて毎期計画を見直す、いわゆる「ローリング方式」で3カ年の中期経営計画を策定、実行している。
去年発表した中期経営計画では、24年3月期に売上高2540億円、売上高経常利益率4.2%を目標に掲げていた。今回の決算発表時に発表した中期経営計画では、24年3月期の売上高目標は2530億円、売上高経常利益は3.9%に下方修正している。
前述のコスト高要因をはじめ経営環境は厳しさを増しており、優良チェーンとして名を馳せるアクシアルにも強い逆風が吹いている。そうした中で、23年3月期は「“楽しみの種をまく” ―泥まみれで耕す、実るまでやる―」を経営方針に掲げ、「再整備(畑を耕し直し)」、「開拓・開発(新しい種を蒔く)」、「新しい価値観への対応(これからの時代を見据えて)」の3本柱に取り組む。
23年3月期の設備投資額は63億円で、24年3月期は93億円、25年3月期は104億円を投じる計画だ。実直に施策を推進することには定評がある企業なだけに、種蒔きの後に訪れる“実り”に期待したいところだ。