PayPayが肝心要!ヤフー・LINEが「Tポイント外し」で挑む今後の成長戦略とは
今期も増収増益を予想! ZHDの打ち手は?
2023年3月期の業績予想では、売上収益が対前年度+10.0 %の1兆7240億円、調整後EBITDAが3315億円(同±0.0%)~3400億円(同+2.6%増)と、増収増益をめざす。
22年3月期に引き続き、各セグメント領域を積極的に注力し、売上・シェアの拡大を優先する。一方で戦略投資を優先するため、利益面の伸びは弱くなる見通しだ。
さて、中長期の成長加速を確実なものにするべく、Zホールディングスでは3つの取り組むべき課題を掲げている。
1つ目は、クロスユース(相互利用)の促進とグループ経済圏の拡大だ。同社のグループ経済圏は、3つの事業Yahoo!(月間利用者数:約8600万人)、Pay Pay(累計登録者数:約 4700万人)、LINE(月間利用者数:約 9200万人)が支えている。それぞれの事業が連携を図れば、経済圏をより拡大できる。Tポイント利用・付与を見直し、PayPayポイントにプログラムを絞ったのも、連携強化の一環だ。すでにZホールディングスとソフトバンクは保有するTポイント・ジャパンの全株式を売却済みだと言う報道もなされている。2012年から始まったヤフー(当時の社名)とTポイント・ジャパンの親会社であるカルチュア・コンビニエンス・クラブの間の戦略的パートナーシップも、PayPayポイントの急成長と定着をもって役割を終えたという認識だろう。
Zホールディングスは同時に、「決済」「eコマース」「広告」からなる3つのサービスのクロスユース(相互利用)を促進する。eコマースの取扱高拡大・新規顧客獲得は、決済サービス(PayPayおよびPayPayカード)の利用者増加につながり、決済サービス普及がすすめば、今度は逆にeコマース拡大を促すという好循環が働く。
つまりクロスユースとグループ経済圏がマトリクスで顧客に働きかけることで、成長加速が図れるというわけだ。
今期は500~700億円の投資を計画!
2つ目がZ ホールディングスの強みを生かしたコマース事業の拡大だ。圧倒的利用者数を誇るコミュニティサイト(LINE公式アカウント)やPayPayは競合他社に対し優位な立場にある。このほか、「ZOZOTOWN」「出前館」「Yahoo!ショッピング」といったさまざまなグループアセットを活用して新サービスを展開、顧客開拓をめざす。
具体的には、「Yahoo!マート」の23区内におけるカバー体制確立、「LINEGIFT」の品揃え強化やイベント促進、「My Smart Store」のキーテナント獲得など、多面的に施策を展開する。
3つ目がPayPay を起点とした決済・金融事業の拡大だ。とくに力を入れているのが、米国ではすっかり定着しつつある「BNPL(Buy Now Pay Later)」、つまり後払いサービスだ。「PayPayあと払い」の累計利用登録者数はすでに100万人を突破、1人あたり単価も増加傾向にある。
3つの取り組みを進めるために、投資は21年度の220億円から2022年度は500億円~700億円に増加する。投資ウエートはメディア:20、コマース:50、戦略:30となる予定で、今後はメディアでキャッシュを創出してコマースや戦略につぎ込もうという思惑が見てとれる。
反面、積極的な投資は利益を圧迫する。かつては売上収益営業利益率50%以上を誇った同社だが、近年は10%前半と十分高いものの往時と比べれば物足りない数字となっている。戦略投資が実を結び、トップラインだけでなく利益面でも黄金時代を迎えることができるのか、今後に期待したいところだ。