AIが個店経営の本質である理由とは
「掛け算出店」とは真逆のセブンの出店方法
経営には、「足し算」の経営と「掛け算」の経営がある。個店経営の基本は、掛け算ではなく足し算にある。その一つが「出店の方法」である。
個店経営を創始したセブン-イレブン・ジャパン(東京都:以下、セブン-イレブン)はすでに国内2万店を超え、店数では世界最大のチェーンになっている。ここで特筆すべきは、それは1店ずつ“足し算”をした結果であるという点だ。
それまで人々が信じていたチェーン出店の基本原理は、「画一売店」というひな形の急速な大量複製出店、すなわち「掛け算出店」であった。画一売店を奨めたのも、“掛け算”で出店するとすれば、画一売店の急速コピーで一挙に出店するしかないからだ。
ところがセブン-イレブンは、まず個々の商勢圏を定め、それをいくつかの商圏に分割し、その商圏の一つひとつでそれぞれフランチャイジーを募集して、1店ずつまさに“足し算”で出店。次に二つめの商勢圏を定め、また足し算で店数を増やし、それを日本全国で繰り返し、ようやく沖縄出店にまで漕ぎ着けたのである。
2万店という店数は、2万ものフランチャイジーを順に足し算して辿り着いた結果だ。それはチェーン理論型のチェーンの「掛け算出店」とは、まったく真逆の方法であり、これまでの常識を全面的にひっくり返す画期的な発想だった。
さらにセブン-イレブンは品揃えにおいても、足し算の手法を採用した。セブン-イレブンは1号店から、コンビニエンスストア(CVS)やスーパーマーケット(SM)といった「業態」を選ばずに、セブン-イレブン独自のアソートメント(品揃え)で創業した。
それだけでなく、2号店以降も1号店のコピー、すなわち掛け算ではなく、1号店と同様に1店ずつ品選びをして出店した。品揃えもまた、個店ごとに足し算で行われたのである。
米セブン-イレブンの前身であるサウスランド・アイス社が、CVSという「業態」を選び、品揃えを完全に画一化し、掛け算で出店する典型例だったにもかかわらず、日本のセブン-イレブンはそれを全面的に否定し、足し算の方法を選択したのである。「業態」とは、「ある買物が1店で便利に済ませることができる品揃え」である。だから、初期のSM業態はどの店も、おのずと画一化品揃えになるしかなかった。
個々の商品でも生きる「足し算」の発想
セブン-イレブンは、