阪急うめだ本店が「ラグジュアリーブランド」を強化する理由とは
コロナ禍を転機として、ECの拡大などデジタルシフトが加速、リアル店舗の代表でもある百貨店の存在価値が問われている。そうした中、エイチ・ツー・オー リテイリング(大阪府/荒木直也社長)傘下の阪急阪神百貨店の旗艦店である「阪急うめだ本店」は、「楽しさ世界No.1の劇場型百貨店」を標榜。デジタルを活用したOMO施策に取り組むと同時に、得意とするラグジュアリーブランドの限定商品の提供、期間限定のエンターテイメント型イベントなど、リアルでしか味わえない買い物体験を次々と打ち出し、リアル店舗の魅力を高める考えだ。さらに、名物催事の「英国フェア」を他社の百貨店内でも開くなど、ほかの百貨店との協業も進め、そこでの体験を通じて、阪急うめだ本店の競争力アップにつなげる。
百貨店は価値ある顧客体験を提供すべき
大手百貨店の阪急阪神百貨店の旗艦店である「阪急うめだ本店」は、大阪はもとより、日本を代表する百貨店の一つと言っていいだろう。1929年(昭和4年)オープン、2029年に創業100周年を迎える。梅田駅に直結した、世界初のターミナル型百貨店としても知られ、売場面積は約10万㎡(阪急メンズ大阪含む)と日本最大級だ。21年3月期の売上高は1751億円(阪急メンズ大阪含む)。西日本のみならず、コロナ前は中国など海外からも、おおぜいの顧客が訪れていた。とりわけファッションでは、「東の伊勢丹」と並び称される。
百貨店の「西の横綱」とも言うべき、そんな阪急うめだ本店にも時代の荒波が打ちつけている。ECの台頭に加えて、コロナ禍でデジタルシフトに拍車がかかり、“リアル店舗”としての存在価値を問われるようになったのだ。
そうした中、阪急うめだ本店は、「楽しさ世界No.1の劇場型百貨店」を目指すとして、①グローバルに通用するスペシャリティコンテンツの拡充、②オンライン・オフラインの区別のない価値ある顧客体験(ジャーニー)の提供、③サステナビリティの推進という、事業戦略を掲げている。阪急阪神百貨店 取締役専務執行役員・阪急本店 本店長の佐藤行近氏は、次のように説明する。
「百貨店は、コンテンツのテーマパーク化が重要だと考えている。例えば、オンラインが発達しても、ユニバーサルスタジオジャパン(USJ)には行きたいと思う。USJでなければ楽しめない、リアルの体験があるからだ。同じように、阪急うめだ本店でしか買えない商品、体験できないサービスがあれば、お客さまは必ず足を運んで下さるはず。社会のデジタル化が進んでも、それは変わらない。私たちは、リアルの世界に生きているわけだから。ただ、リアルだけだと提供する価値としては不十分なので、OMO施策を進め、オンライン・オフライン両軸でお客さまとつながり続けることを目指す」