低迷する花き業界、なぜ青山フラワーマーケットはコロナ禍でも売上が伸ばせるのか
海外進出先は「パリ」
2015年には、海外進出も果たしている。海外の一号店はパリ。街中に花屋があり花を楽しむというライフスタイルが生活者に定着しているパリで、青山フラワーマーケットは評判の花屋となった。
注目されるようになったきっかけは、青山フラワーマーケットの代名詞的存在であるライフスタイルブーケだった。「なんて小さくて可愛いの!」とパリジェンヌが驚いたのは、花の買い方に違いがあるからだ。彼らはチューリップを20本といったように、一品目をまとめ買いする傾向にある。日本人の器用さ、小さくて豊かな世界観が新鮮に映ったのだろう。
多くのパリジェンヌに愛されるようになった結果、パリのシャルル・ド・ゴール空港では、ロダン美術館、ピエール・マルコリーニ等と同列に紹介されるようになった。そうしたパリの評判を聞きつけたロンドンのバイヤーが、2018年5月、世界一と名高い「セルフリッジ英国百貨店」のエルメスの真横に出店する機会を作ってくれた。
そうした反響を受け、コロナ前は、ニューヨーク、アジア圏への出店も視野に入れていたが、現在は、状況を伺いつつ、次の展開を思案中だという。
積極的に行う「商品開発」
一方で課題もある。遠藤氏によると、少子高齢化で生産者が減っており、さらに新型コロナの影響で冠婚葬祭の需要が減少していることから、厳しい選択を迫られる生産者もいるという。「このまま生産者が減り続けると10年後には、『売る花がない』といった現象も想像できてしまう。作り手が減り、流通する花が減れば、お客さまに届けられなくなってしまう。向こう3年を目処に生産者との強固な関係構築に注力していきたい」(同)
たとえば、市場を通さず花きの鮮度を保った状態でエンドユーザーに届ける仕組みを構築する。近年活発化している産地直送はもとより、生産地で採れた花を新幹線で店舗へ届ける新幹線輸送にも花屋で初めて参画。4月21日には高速バス輸送企画をスタートするなど、生産性向上のための課題解決や多様な出荷形態の構築といった、さまざまな取り組みを模索している。
商品開発にも意欲的だ。例えば、お月見の花飾りで使う、黄色の菊「ピンポンマム」。「弊社では、まんまるのお月様のようなピンポンマムをメインにしたアレンジメントを提案しているが、ピンポンマムはこの季節に日本であまり流通しておらず、海外からの輸入に頼っていた。これを日本の生産者に委託し、数年がかりで開発。現在は国内の生産者からの仕入れが可能になり、より品質の良い美しいピンポンマムを提供できるようになった」(同)
4月15日、南青山本店がリニューアルオープンする。1993年のオープン以来、多くの顧客に愛されてきた店舗だ。長年の感謝の気持ちを込めて、リニューアルオープン時には1万本のバラで客を歓迎する。花の力をより感じられる空間へアップデートし、さらに提案の幅を広げていく考えだ。