杏林堂薬局が「100年企業戦略」を立てる理由とその実現のためのユニークな5つの特徴とは
静岡県を地盤に、生鮮食品とインストアベーカリーを強化、食品と酒の強化、雑貨と軽園芸の強化、そして調剤併設とカウンセリング化粧品のプレミアムブランドを強化しているのが杏林堂薬局(小河路直孝社長)である。店スタッフ一人ひとりの創意工夫を尊重する店づくりも特徴である。需要創造とラインロビングに挑戦する杏林堂薬局の「100年企業戦略」を研究する。
静岡県でカテゴリーいちばん店をつくる
中国の三国時代、呉の名医・董奉(とうほう)は病人を治療しても報酬を受け取ることもなく、完治した患者には治療代の代わりに杏(あんず)の木を植えさせた。その木々はやがて成長し、一帯には見事な杏の林が広がったという。杏林堂薬局の社名と行動形式の由来は杏林伝説からきている。
杏林堂薬局は2020年、創業120周年を迎えている。そしてこれからの100年を想定した店づくり、企業づくりに取り組んでいる。「杏林堂薬局の100年企業戦略」である。
杏林堂薬局はとにかく新しいことに挑戦する。失敗もするけど、それにめげずに挑戦し続ける。
たとえば1995年には売場面積500坪のメガドラッグストア(DgS)1号店を開発している。開店当時は月販3000万円も売れなかった。つまり「失敗」である。しかしへこたれずに、そこから店づくり、売場づくり、店スタッフ育成に取り組み、今では業界トップクラスの繁盛店に仕上げている。しかも毎年既存店の売上を伸ばしている。
杏林堂薬局はその後も調剤併設、カウンセリング化粧品強化、化粧品プレミアムブランドの導入、食品強化、菓子強化、酒強化、インストアベーカリーと生鮮食品の導入と強化、52週MDとカテゴリーいちばん店づくり、とくし丸の導入、ネットスーパーなどに取り組んでいる。とりつかれたように新しいことに挑戦し続けている。
「失敗をしないこと」を恐れる、挑戦の社風
新しいことは経験がないことであり、失敗するリスクがある。取り組み始めはうまくいかないことのほうが多い。また新しい挑戦は開始時点では利益を生まないので経営効率を下げる。だから多くのDgS企業は新しいことに挑戦しない。他社が挑戦して成功事例が増えてから真似して取り組むことが多い。
杏林堂薬局はそうではない。