国内スーパー屈指の物流体制生みの親が教える、スーパーの物流改革と投資効果測定の手法とは
縦割り型の組織で、部門間に見えない壁が存在するケースも少なくない食品スーパー(SM)業界。しかし、物流イノベーションを起こすには、部門を超えた課題や情報の共有、戦略策定が必要になってくる。SMという業態において、あるべき物流変革の道筋とはどのようなものなのか。本特集でも取り上げたオギノ(山梨県)で、同社が物流強化の方針を打ち出した黎明期から物流システムの改革に携わっていた、物流アドバイザー・野田勝氏が解説する。
物流センターは「箱」ではなく「事業」
コロナ禍での内食需要の高まりにより、2020年度以降、SM各社の業績は概ね好調だ。しかし、22年度以降は“コロナ特需”は落ち着き、事業環境が再び厳しくなると予測される。そうしたなかでSM業界では、コロナ禍の好業績で得た資金を、プロセスセンターを含む物流センターなどに投資し、物流を起点とした店舗オペレーションの改善に取り組む動きが全国的に活発になっている。
まず理解しておくべきは、物流センターは単なる「箱」ではなく、商品の仕入れから店舗での販売までを一気通貫でつなぐ「事業」であるということだ。その事業を成立させるために必要なのは、投資計画を策定し、物流センターを稼働させるまでの「生みの苦しみ」だけではない。商品調達から店舗オペレーションまで、業務プロセス全体の改善にしっかりと踏み込み、物流センターを生かして店舗の生産性の向上に努める「育ての苦しみ」を経ることこそ重要なのだ。
ただ、SM業界では、多額の資金を投じて物流センターを建設したものの、商品の仕入れや店舗オペレーションの改善にはつながらず、投資計画でシミュレーションした投資効果が実際には得られていないケースも散見される。
その背景には、小売業が一般的に、商品を仕入れる「商品部」、仕入れた商品を店舗で販売して売上を稼ぐ「販売部・店舗」のように、縦割り組織で運営されている弊害がある。企業規模の大小を問わず、商品の仕入れと店舗での販売をつないで商品供給のフレームワークをつくる機能が十分でない。そのため、せっかくの投資が部門ごとの部分最適で終わってしまうことが多く、その企業のサプライチェーン全体の最適化まではたどり着かないという課題がある。
「物流部門は社長直轄に」変革を促す組織づくりの手法
物流センターへの投資の成否は、
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