「健康」を売る!(下)
(昨日の続きです)
一方、食品スーパー企業はどうだろうか?
日々の食品・食事提供業である食品スーパーの役割は極めて大きいことは言うまでもないはずだが、いまのところほとんどの企業は、消費者の“健康”ケア視点を持ちあわせていないように見える。
もちろん、取扱い商品を吟味し、原材料、原産地、内容量、賞味期限、カロリー、塩分・糖分などの成分表示はしている。
けれども、たとえば、その実際の摂取量については、消費者任せという企業が大半だ。
消費者が何を購入しようがどれだけ食べようが自由である。
だから、食品スーパーの現状を評論することは筋違いである。
ただし、市場が同質飽和化している中では、そこから脱却し、差別化を図っていくという企業が出てきてもいい。
昨日のBLOGで見たように、日本の消費者は、年齢的にも生活習慣的にもアレルギー的にも大きく変わってきている。
消費者が変わっているのだから、それに対応するのは小売業の役割というものだろう。
だからこそ、“健康”ケアを軸に据えた食品スーパーの可能性を検討したい。
“健康”ケア食品スーパーの具体的なイメージを記していくなら、まず品ぞろえや価格は通常の食品スーパーとほぼ同じだ。そこにオリジナルの健康食品や原材料に工夫を凝らした商品を差し込む。また、加工食品や日配品だけでなく、有機食品を含む生鮮食品や総菜の(原材料)産地やカロリー・成分表示も行う。
注意しなければいけないのは、“健康”というとどうしても、堅苦しく、敷居が高く、おしゃれな食事とはかけ離れてしまう側面が出てくるきらいがある点だ。だから、店舗や売場は“健康”ばかりを前面に押し出すのではなくカジュアルなものにする。
ネットスーパーの配達便も利用できる。ハウスカードによって購買履歴を記録、自社以外で購入し摂取した食物は別途打ち込み、消費者の食歴管理をする。さらには、ドラッグ部門や調剤部門を併設し、“健康”カウンターを設けることで、薬歴の管理も同時に行う――。
富士通(東京都/山本正巳社長)の豊木則行執行役員常務によれば、IT技術の進化によって、消費者の①日々の行動、②毎年の検査数値の変化、③過去の病人のデータを掛け合わせ、クラウドベースに放り込んでしまえば、「来年、あなたが糖尿病に罹患する確率は50%」と予想するサービスが早晩出てくるのだという。
こうしたクラウドサービスにハウスカードの情報をリンクさせれば、罹病予測の精度はさらにアップし、食のアプローチからさまざまな手を打つことができる。これだけで「健康寿命」が2~3年は延びるかもしれない。
消費者は、自然と“健康”ケア食品スーパーを当てにするようになり、ファンとなり、離れられなくなる。
“健康”はお金には代えられないから、価格軸以外の差別化策になること請け合いだ。
そこに大きな商機があるといえる。
惜しいのはいまのところ、“健康”市場の分野でもコンビニエンスストアが先駆者になっており、リーダーになろうとしているところだ。
実際、ローソンは「まちの“健康”ステーション」にPONTAカードを組み合わせて、いま話してきた夢のような取り組みに着手している。
この数年の間に、主婦層からの支持を獲得し、シニア層を掘り起こし、食品スーパーのパイを侵食し始めているコンビニエンスストアに食品スーパー企業も負けてはいられない。
関連BLOG
http://diamond-rm.net/articles/-/7069
※『チェーンストアエイジ』誌2014年2月15日号では、「『健康』を売る!」という特集を組み、このBLOGで書いてきたような話を具体的にレポートしています。ぜひ、ご購読いただきたくお願いいたします。
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