知る人ぞ知るスーパーマーケットの聖地、 福岡・小倉の旦過市場を歩く
かつて福岡の小倉を訪れると、活気ある雰囲気が好きでよく立ち寄っていたのが旦過市場(たんがいちば)。しかし最近はコロナ禍の影響もありごぶさたになっていた。その間、2度も火災に見舞われたとのニュースを聞き心を痛めていたが、今回、久しぶりに現地を歩くことができた。食品スーパーの歴史においても重要な同市場の今をレポートする。
多様な顔を持つ街
本州から新幹線に乗って西へ、関門海峡を越えて最初に停車するのが小倉だ。九州の玄関口であり、駅名を知らせる車内アナウンスが流れてくるだけでも気分が盛り上がってくる。
小倉と聞き思い出すのは、「点と線」「砂の器」「ゼロの焦点」などの作品で知られる作家の松本清張。北九州が舞台の小説も多く、小倉城近くの「松本清張記念館」には何度か足を運んだ。
駅南側にはアーケードが整備された商店街、また繁華街が広がり、効率的に街歩きができるのも魅力だ。
老舗の居酒屋やうどん店、カフェ、雑貨店や各種サービス店など。ほかにも少し入り組んだ小道に迷い込むと、怪しげな映画館や店が集積するエリアもある。新幹線駅の至近に、これほど多様な顔を持つ土地はあまりないのではないだろうか。
一方、小倉に来るとよく立ち寄ったのが旦過市場である。北九州市を代表する市場であり、鮮魚、精肉、青果といった生鮮食料品店のほか、郷土料理はじめ地元ならではの総菜を売る店などを見るだけでも楽しめる。
とはいえここ数年はコロナ禍の影響もあり、ごぶさたしていた。その間、2022年4月と8月には、連続で大きな火災に見舞われ、大きな被害が出たというニュースを聞き、心を痛めていた。だが今回、福岡県で仕事があり、久しぶりに時間を見つけ現地を歩いてみた。
北側から市場を眺めると、入口の右に立つのが旧・丸和フードセンター(現・ゆめマート 小倉)。日本で初の食品スーパーは、1953年開業の紀ノ国屋だと言われるが、1956年に営業を開始したこの小倉の店が1号とする説も有力だ。
鰹節の卸売業者だった関西スーパー創業者の北野祐次氏が、同店の盛況ぶりに食品スーパーの将来性を見出したというエピソードは有名である。その後、同氏は食品スーパーの効率的な運営ノウハウを構築、他の企業に広めたという意味では、旦過市場は食品スーパー業界の聖地であるといっても過言ではない。
数年ぶりの旦過市場。中の様子はどうなっているのか、入ってみよう。
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