ごはんが主役!? 京都・西陣の人気洋食店のお米がここまでおいしい理由

2023/10/20 05:59
森本 守人 (サテライトスコープ代表)
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京都・西陣に行列ができる人気洋食店がある。看板料理はハンバーグだが、一番こだわりがあるのは“ごはん”。最高の状態で提供するため、毎日、使う分だけを、自前の専用機で精米するほどの徹底ぶりだ。なぜ同店は、ごはんに力を入れるのか。理由を探るため、私は現地に向かった。

昼時には行列ができる人気店

 西陣織の生産地として有名な西陣。地名は、応仁の乱で西軍が陣を敷いたことに由来する。その西陣の千本今出川交差点から北へ歩くこと数分、古い住宅街の一角に立地するのが洋食店「キッチンパパ」だ。

 店は大通りになく、建物はやや古びている。それにもかかわらずランチタイムには行列ができる。

店は大通りにはなく、建物はやや古びている。だがランチタイムには行列ができる

 人気の秘密は、看板料理のハンバーグがおいしいから。メニューには「特製デミグラスソースの自家製ハンバーグ」「和風出汁おろしポン酢ハンバーグ」といった、ハンバーグが主役のメニューのほか、シチューやエビフライなどと組み合わせたセットも多く載っている。

 だが同店が本当に食べてほしいと考えているのは“ごはん”である。洋食店でありながら、なぜ「主菜」のハンバーグではなく「主食」にこだわるのか。

 それは洋食店を経営しているのが米穀店だからだ。創業は江戸時代末期の安政3年(1856年)で、今年で167年目を数える。

 老舗米穀店が洋食店を始めた背景には、新たなビジネスを模索する意図があったと思われる。具体的には1995年、国内における米の流通が自由化、従来あった規制が緩和されるなど、米穀店を取り巻く経営環境は大きく変化した。今後、競争の波にさらされると予想、新分野の飲食業チャレンジしたのだろう。キッチンパパが営業を始めたのは1996年なので、米穀業界の動向と合致する。

 固い話はさておき、私はキッチンパパへやってきた。店内に入ると、そこは普通の“お米屋さん”で、拍子抜けする。突き当たりのドアの向こう側が洋食店という、不思議な造りになっている。

実は洋食店を経営しているのは米穀店。入口の横には「店頭即時精米の店」との文字。ガラス窓の向こうには精米機が見える

 先客が数組おり、私は壁際に置かれた椅子で待機する。メニューが手渡され、米穀店で店番をする女性に注文するというシステムである。

看板料理はハンバーグ
飲食スペースの壁には「洋食屋キッチンパパのセットメニューは、ごはん、みそ汁、サラダがついています!!」と記した黒板が見える。手書きでしゃれている

 順番が回ってくる間、米穀店の店内を眺めていた。量り売りコーナーがあり、売場には「京都丹後産コシヒカリ」「滋賀県産きぬむすめ」「山形県産雪若丸」などが並んでいた。

 そのうち「京都丹後産 ミルキークイーン」には「本日のお米」「洋食屋にてお召し上がりいただけます」とのPOPが添えてある。なるほど、今から私が洋食店食べる料理には、この米が使われているのだなと思った。

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記事執筆者

森本 守人 / サテライトスコープ代表

 京都市出身。大手食品メーカーの営業マンとして社会人デビューを果たした後、パン職人、ミュージシャン、会社役員などを経てフリーの文筆家となる。「競争力を生む戦略、組織」をテーマに、流通、製造など、おもにビジネス分野を取材。文筆業以外では政府公認カメラマンとしてゴルバチョフ氏を撮影する。サテライトスコープ代表。「当コーナーは、京都の魅力を体験型レポートで発信します」。

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