水素による脱炭素、50年までに15兆ドルの投資必要=英民間調査
[ロンドン 27日 ロイター] – 英シンクタンクのエナジー・トランジションズ・コミッション(ETC)は27日付リポートで、世界的にエネルギー業界などが水素を利用して脱炭素を進めるには、今から2050年までに約15兆ドルの投資が必要になるとの見通しを示した。
ETCは、50年までの排出量実質ゼロ化を掲げるパリ協定の目標達成を約束する世界のエネルギー業界幹部らでつくる組織。
水素生産に再生可能エネルギーを利用する「グリーン水素」の自動車や発電所向け利用は多くの政府が支持しているが、現在は高い価格が普及のネックになっている。推進派は、インフラ投資や、輸送や天然ガス施設など産業界からの需要拡大によってコストは下がると主張している。
リポートは、50年までの目標達成にはすべてのセクターでグリーン電力が鍵になると指摘。特に水素が、鉄鋼業界や輸送業界などの脱炭素に重要な役割を担うとした。
水素の使用量は、現在の年1億1500万トンから50年までに5億─8億トンに増え、最終エネルギー需要総計の15─20%を占めると予想。それだけの水素生産には排出量ゼロの電力供給を大きく増やす必要もなり、その双方で約15兆ドルの投資が求められると試算した。必要投資額は30年代末ごろに年約8000億ドルまで膨らむとみている。
必要になる投資の内訳は約85%が発電、15%が電解槽や水素生産装置や輸送・貯蔵インフラ向けとした。
大規模な水素貯蔵には岩塩洞窟貯蔵が最も安価になるという。ただ、50年の年間水素使用量の5%を貯蔵するために必要な岩塩洞窟は通常規模で約4000カ所になるとした。現在、天然ガスの貯蔵に使われているのは約100カ所のみ。