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アングル:デジタル資産NFT、その仕組みと人気爆発の理由

デジタルアート作家「ビープル」ことマイク・ウィンケルマン氏によるコラージュ作品、「EVERYDAYS: THE FIRST 5000 DAYS」
3月17日、デジタル資産の一種である「非代替性トークン(NFT)」は、今年に入って人気が爆発し、アート作品が数千万ドルで売却されたり、著名ロックバンドが最新アルバムをリリースしたりしている。画像は、デジタルアート作家「ビープル」ことマイク・ウィンケルマン氏によるコラージュ作品、「EVERYDAYS: THE FIRST 5000 DAYS」。提供写真(2021年 ロイター/BEEPLE)

[17日 ロイター] – デジタル資産の一種である「非代替性トークン(NFT)」は、今年に入って人気が爆発し、アート作品が数千万ドルで売却されたり、著名ロックバンドが最新アルバムをリリースしたりしている。

デジタル形式でのみ存在し、誰もが無料で見られる作品にこれほどの大金が支払われることが腑に落ちない人々は戸惑うばかりだ。

NFTの仕組みと人気の理由、リスクをまとめた。

NFTとは何か

暗号資産(仮想通貨)の基本技術として知られるブロックチェーン(分散型台帳)に存在するデジタル資産だ。ブロックチェーンは公共性のある台帳で、誰でもその資産の真正性や所有権を証明することができる。

そのため無制限に複製が可能なほとんどのデジタル資産とは違い、固有のデジタル署名を持ち、「唯一無二」だ。

普通は暗号資産「イーサリアム」、もしくはドルで購入され、ブロックチェーンに取引記録が残る。NFTの作品は誰でも見ることができるが、購入者は正式な所有者としてのステータスを手に入れ、デジタル上で自慢する権利のようなものを得る。

NFTの種類

画像、映像、音楽、テキストからツイッターへの投稿まで、あらゆる種類のデジタルコンテンツをNFT化することができる。

デジタルアートの取引が注目を集めているが、スポーツ界ではファンが特定の選手やチームに関連するNFTを収集したり、取引したりすることが可能だ。

例えば米プロバスケットボール協会(NBA)が立ち上げた、ブロックチェーンを基盤とするプラットフォーム「トップショット」では、熱心なファンがゲームのハイライト映像の形で、収集可能なNFTを購入できる。

こうした映像はユーチューブなど他のプラットフォームで、無料で見ることが可能だが、固有のデジタル署名を備えたNFTは唯一の存在であり、人々は所有者としてのステータスを購入することになる。

また、仮想空間の土地や、仮想通貨の特定のウォレット名を独占利用する権利などもNFTになり得る。

ツイッターの創業者であるジャック・ドーシー最高経営責任者(CEO)は、「just setting up my twttr(私のツイッターをいま設定した)」という自身の初投稿をNFTとしてオークションに出品しており、21日に入札が締め切られる。

最近注目を集めたNFTの取引

・3月13日:デジタルアーティストのスライム・サンデー氏とミュージシャンの3LAUによるミュージックビデオが130万ドル(約1億4100万円)で売却され、買い手が曲名を付ける権利を手に入れた。

・3月11日:クリスティーズのオークションでデジタルアート作家ビープル氏の作品「Everydays:The First 5000 Days」が6930万ドルで落札された。

・3月11日:デジタルアート作品「クリプトパンク」のキャラクターの1つが約760万ドルで販売された。

・3月6日:ツイッターの創業者であるジャック・ドーシー氏が自身の初ツイートをオークションに出品、直近の最高入札額は250万ドル。

・2月28日:ミュージシャンであるグライムスの作品に580万ドルの値が付いた。

・2月28日:3LAUが複数のNFTの形でアルバムをリリース、売上高は合計1170万ドル。

・2月25日:ビープルの作品である10秒間のビデオクリップが660万ドルで売却。

・2月22日:NBAのトップショットで、プロバスケットボール選手、レブロン・ジェームズさんがスラムダンクを決めるビデオクリップが20万8000ドルで売却。

・2月19日:ニャンキャットと呼ばれるアニメ画像が約58万ドルで売却。

市場の急成長

NFTの取引は2017年ごろに始まり、今年に入って急増した。NFTが取引されるオープンシーでの月間売買高は1月には800万ドルだったが、2月に9520万ドルに膨らんだ。

NFTのマーケットプレースのデータを収集しているノンファンジブル・ドット・コムによると、イーサリアムのブロックチェーンでのNFTの取引累計は4億ドル余りで、その半分程度が過去30日間に集中している。

NBAのトップショットはユーザー数が68万3000人、これまでの売上高は3億9600万ドルで、このうち2月分が2億3200万ドルを占める。トップショットはノンファンジブル・ドット・コムのデータに含まれていない。

なぜ今か

NFT取引の急増は、新型コロナウイルス流行によるロックダウン(都市封鎖)で人々が自宅にこもり、インターネットに費やす時間が増えたのが原因との指摘もある。ただ、NFTは所有者がオンラインの友人に見せられる所有権を得る手段でもある。

急激な値上がりで大きなリターンを得ようと参入した人もいる。近年は「仮想通貨長者」が大量に生まれ、イーサリアムを投じている。

NFTが重要な理由

熱心な推進派は、NFTが将来の所有方式になると見ている。最終的にはイベントのチケットから住宅まで、あらゆる資産の所有権がNFTによってトークン化されると考えている。

アーティストにとっては、どうやってデジタル作品から収入を得るかという問題の解決策になるかもしれない。アーティストは最初に作品を売却した後も、NFTの持ち主が変わるたびにロイヤルティーを受け取ることができるからだ。

NFTで音楽の形も変わるだろう。キングス・オブ・レオンのNFTを買った人々は、限定版のレコードや将来行われるコンサートの席を入手できる。

リスク

NFTは誰でも生み出すことができるため、各々のNFTが希少だからといって価値が保証されるわけではない。熱狂が収まった後に損失が残ることもあり得る。

NFT市場では参加者の多くがペンネームを使っており、詐欺のリスクもある。