バロックジャパンリミテッド 代表取締役社長兼最高経営責任者 村井 博之
商品開発力と販売力を武器に、国内市場の深耕と海外展開を進める
そのほか、社員のモチベーションを高める取り組みとして、15年に「スター発掘コンテスト」を始めました。このコンテストは社員全員にエントリーの資格があり、グランプリになると、賞金と「夢を1つ叶える」権利が与えられます。芸能界への進出やモデルへの転身といった、たとえ当社の事業内容と直接かかわらない夢であっても会社ができる限りバックアップします。初代グランプリに選ばれた販売スタッフの中村真里は「自分のブランドを立ち上げたい」という夢を叶えました。新ブランド「RIM.ARK(リムアーク)」を立ち上げ、ブランド・ディレクターに就任しました。
このように仕事のやりがいを高めることで、金銭的な満足感だけでなく、精神的な満足感を共有できる仕組みづくりに取り組んでいます。
中国事業で出店攻勢、純利益率10%を達成
──ここ数年、海外の店舗数が急増しています。海外戦略はどのように展開していきますか。
村井 日本の衣料品市場は規模が小さく、国内のマーケットを深耕するだけでは限界があります。そこで、成長戦略として、海外への進出を掲げています。海外事業は中国と米国の2つが柱です。
中国事業は13年にBELLE INTERNATIONAL HOLDINGS LIMITED(以下、Belle社)と合弁事業を開始したことが出店戦略の転換点となりました。10年に初めて独資で中国に進出しましたが、中国語を使える社員も少なく、出店速度が上がりませんでした。そこで、中国国内で成功しているBelle社と合弁会社「バロックチャイナ」を立ち上げました。Belle社は中国最大の靴のSPA企業で、中国国内に2万店舗展開しています。バロックチャイナでは、「マウジー」と「スライ」ブランドの店舗を展開しています。
この合弁事業によって出店が一気に加速しました。それまで中国における当社の年間平均出店数は7.3店でしたが、合弁事業開始後は57.6店になりました。中国事業の売上高純利益率は約10%で、日本国内の事業を上回っています。中国に進出した日本企業でこれだけの利益率を出している会社はほかにないと思います。
──Belle社との合弁事業によるメリットは何ですか。
村井 メリットは2つ挙げられます。1つはサプライチェーンです。独資で進出した日系企業は、日系の商社や物流会社のサプライチェーンに依存しており、北京や上海といった、いわゆる沿海ベルト地帯までしか物流網を持っていません。それに対してBelle社は、中国国内のほとんどを網羅しています。それを生かし、バロックチャイナはほかの日系企業が進出していない内陸の雲南省や貴州省にも出店しています。今年は新疆ウイグルにも進出する予定です。
2つめはコストです。店舗開発と物流にかかるコストを大幅に減らすことができました。たとえば店舗の内装工事で、日系の内装業者の場合、一坪当たり60万~70万円の費用がかかりました。これに対して、中国の内装業者の場合には、コストがその3分の1以下になりました。物流費についても、Belle社は自社物流を持っているため、日本の物流会社に委託していたときの6分の1ほどに圧縮できました。
──中国事業の見通しを教えてください。
村井 中国は25年に1000店舗以上をめざします。今は出店速度に対して生産が追いついておらず、出店速度を落としています。現在、品質を維持したまま生産量を増やせるよう、生産体制を見直しています。生産量が増えれば、Belle社の年間出店数が約2000店舗なので、バロックチャイナの出店を加速させるポテンシャルは十分あります。20年には中国の売上が日本を上回っている可能性もあります。