QVCジャパン 代表取締役社長 佐々木 迅
独自商品を増やし、「究極の対面販売」に磨きをかけて成長を図る!
商品の価値をお客に伝達する
──QVCジャパンは、2003年にEC(電子商取引)サイトを開設。14年10月からは動画配信サイト「YouTube」で、QVCの生放送のテレビ通販番組のライブ配信を開始しています。現在は、どのような施策に力を入れていますか。
佐々木 大きく3つあります。
1つは、独自商品の開発です。
ほかにはない商品を取り揃えることは、QVCで購入してもらえる大きな動機になります。商品開発は企画会社とタッグを組んで行う場合もあります。売れ筋はファッションのカテゴリーです。現在、ファッションのカテゴリーは全体の売上の45%ほどを占めています。
2つめは、商品の正確な情報をしっかりとお客さまにお伝えすることです。
QVCが力を入れているのは、メーカーの担当者にゲストとして番組に出てもらい、商品の特長をお客さまに説明していただくことです。社名のとおり、商品のQuality、Value、Convenienceをしっかりお客さまにお伝えすることを最も重視しているからです。ゲストは必ずしも説明の仕方がうまいわけではありませんが、その商品についてはいちばん詳しく知っています。
たとえば、新潟・燕三条の鍋は、外国製のものと比べて数倍~数十倍も値段が高いのにもかかわらず、当社ではとてもよく売れます。それは、商品の特長をしっかり説明しているからです。
工場での製造工程を撮影して番組で放映し解説。鍋の断面や構造も示して熱伝導率が高いことをわかりやすく説明します。そのようにして価値のある鍋だとお客さまに理解していただいているのです。
店舗小売業では、商品知識を持った従業員が少なくなってきているように感じています。ローコスト運営に力を入れて店頭に人員を配置しないとなると、商品のアピール要素は価格だけになってしまうかもしれません。
また、特定の商品について詳しい従業員がいても、取り扱っているすべての商品の特長を正しく理解できるようになるまで育成することはとても難しいと思います。その点、QVCはその商品についていちばん詳しいゲストが番組で説明します。これはいちばん説得力のある方法であり、私は「究極の対面販売」だと思っています。
そして3つめの施策は、お客さまとの結びつきを強める取り組みです。われわれは店舗を持っていませんから、お客さまとの接点は基本的には「カスタマーコンタクトセンター」に限られます。ですから、「お客さまに選ばれるチャンネル」になることをテーマに掲げ、お客さまとの接点を増やすことを目的にさまざまなイベントを実施しています。
たとえば、衣料品をメーンに提案する「ファッションデー」では、観覧番組をつくり、実際にお客さまに当社のスタジオにお越しいただきました。
当社のファンの方は、番組に出演しているゲストに親しみを持っていますから、楽しみに観に来られます。番組観覧の後は懇親会も開催したりしています。
このようにお客さまとの接点をもっと増やしていきたいと考えています。
──さて、通販業界全体は、「Amazon.co.jp」や「楽天市場」をはじめとしたインターネット通販の隆盛により市場が大きく拡大しています。テレビショッピング市場の成長性をどのようにみていますか。
佐々木 われわれの番組を観ることができるのは約3500万世帯です。日本の総世帯数は約5200万ですから、7割弱の世帯にリーチできることになります。当社の実際のお客さまは約500万人に過ぎませんから、事業を拡大できる余地は大いにあると言えます。
またテレビショッピングの売上規模は、JADMAによると約5800億円になります。
これは、韓国とほぼ同じマーケットサイズだと言われています。韓国のテレビショッピングは、家電製品がいちばんの売れ筋になっていますが、人口は日本の半分以下の5044万人です。ですから日本のテレビショッピング市場が1兆円になってもおかしくはありません。
地道な広報活動やプロモーションなどによりQVCの認知を広げて、テレビショッピングの売上を大きくしていくことは十分可能だとみています。