日本生活協同組合連合会 専務理事 矢野和博
生協が存続し続けるためのマーケティング力が問われている

2012/11/01 10:00
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──コープ商品は組合員の意見を反映させていることが特徴です。組合員に参加意識を持たせるためにどのような工夫をされるのですか。

 

矢野 日生協が直接組合員から意見を聞く場合と、会員生協が独自に組合員の意見を集める場合があります。販売数量が多く見込まれる重点商品の場合は、日生協と複数の会員生協で組合員の意見を募集するかたちになっています。

 

 商品開発においては、とくに年齢層を限定せず、幅広い年齢層から意見を集めています。日生協ではインターネットを活用した宅配受注システム基盤の「eフレンズ」を会員生協に提供していますが、そのSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)機能を活用し、組合員の声を商品開発に反映しようという動きも出てきています。たとえば、コープネット事業連合(埼玉県/赤松光理事長)では「モニターラボ」というSNSを立ち上げ、そこに寄せられた組合員の声を商品開発に生かしています。

 

 さらに、意見を反映させたことを組合員に理解していただけるよう、そのプロセスの可視化を進めています。「eフレンズ」のサイト上やカタログ上において、組合員の意見を掲載したり、開発プロセスを紹介していますので、商品をより身近に感じてもらえると考えています。

組合員の属性分析には会員生協の協力が必要

──会員生協による「eフレンズ」の活用はどの程度まで進んでいるのですか。

 

矢野 日生協では2000年からECの共通基盤の開発に取り組んできました。会員生協には「eフレンズ」を提供しており、現在、6事業連合と1生協で導入が進んでいます。会員生協に利用料を負担してもらい、日生協がシステム開発を推進しています。

 

 紙媒体のカタログに比べて、「eフレンズ」にはより多くの商品情報を掲載できます。商品に対する組合員の口コミも投稿されているため、これを参考にして商品を選ぶことも可能です。「eフレンズ」上に投稿されたコメントを紙のカタログに掲載し、販促に利用するなどの活用も進んでいます。

 

 また会員生協からの要請を受けて「eフレンズ」のスマートフォン専用サイトを開発し、今年9月にはユーコープ事業連合(神奈川県/當具伸一理事長)に提供を開始しました。

 

 宅配するための物流機能があれば、ネット上に掲載するアイテム数はいくらでも増やすことができます。数量限定の即売ができるほか、ロングテール商品の販売もやりやすくなるでしょう。

 

──受注データを分析して、マーケティングに生かすことも可能ですね。

 

矢野 そうです。これまで組合員の利用データについては宅配と店舗では別々に管理をしていましたが、分析能力をより高めるため、今年9月から宅配と店舗のデータを一括管理できる「コープリング」というシステムの一部運用を開始しました。ほぼすべての会員生協のデータを日生協が管理し、全国で活用できる仕組みです。いままでは会員生協がそれぞれデータを活用していましたが、これを改めて日生協でデータベース化する態勢を整えていく計画です。このデータを活用し、宅配や店舗の品揃えにどのように生かしていくか、いままさに取り組んでいるところです。

 

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