リテール・ストラテジーセンター社長 ブライアン・ウルフ
ウォルマート対策には無駄のない経営と、価格差を感じさせない工夫が不可欠

2011/10/27 00:00
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──そうした価格訴求対象商品は、どのようにして選んでいるのでしょうか?

 

ウルフ 顧客にお得感を印象付けるために、購買頻度の高い商品を選びます。たとえばレタスやバナナ、卵、ひき肉、牛乳、炭酸飲料の12本パック、トイレットペーパー、洗濯用洗剤の「Tide(タイド)」、「Tony’s(トニーズ)」ブランドのピザ、「Huggies」ブランドの紙おむつ…といった商品です。

 

──「マディング・ザ・ウオーター」作戦では、ウォルマートのような競合との価格差を埋めることが可能ですが、この他にも効果的な方法はありますか?

 

ウルフ マサチューセッツ州にあるビッグ・ワイ(Big Y)というSMチェーンが、興味深い取り組みをしています。大型店を約60店舗展開している同社のFSPは、世界でも最高レベルにあると考えています。1991年からFSPプログラムを導入し、20年間にわたって信じられないようなクリエーティブなマーケティング戦略で集客し、顧客情報を集め続けています。

 

 顧客は、ビッグ・ワイで買物をすると、色のついたコインをもらえます。このコインは、もらえるときもあるし、もらえないときもある。しかも、どのくらい買物をすれば何色のコインがもらえるかは、顧客には知らされていないのです。

 

 このコインはいろんな使い方ができ、たとえばコインを使って商品を割引価格で購入できます。コインには4色あり、割引率はコインの色によって異なります。最も割引率が高いのが、ゴールドコインです。この仕組みは、顧客がビッグ・ワイで買物をすればするほどコイン、それもゴールドコインを受け取る確率が高くなり、顧客は得するというのが特徴です。

 

 同社は今年初めにそれまで4色あったコインを、シルバーとゴールドの2種類に減らしました。そして新たに有料のシルバー・カードを導入しています。通常のポイントカードは無料ですが、シルバー・カードは年会費として20ドル(約1600円)が必要です。ただ、シルバー・カードがあれば、コインがなくても特定の200~300アイテムをシルバーコインと同じ価格で購入することができる。つまり、年会費として50ドルまたは100ドルを支払う会員制ホールセールクラブのコストコ(Costco)と同じ仕組みです。

 

 従来のカードでも、引き続きコインをもらうことは可能ですが、同社はコインによる販促の比重を下げています。しかし、年会費20ドルを払ってシルバー・カードを手に入れれば、たくさんの商品をいつでも安く購入できる。しかも、店舗の周辺にあるガソリンスタンド約90店舗でガソリン1ガロン当たり5セント割引になる仕組みですから、すぐに年会費の元は取れるのです。

 

 コストコのように年会費を先払いする仕組みによって、顧客は「元を取る」ためにコストコに優先的に来店するようになります。小売業にとってはよい仕組みなので、将来的には他企業も取り入れるのではないかと見ています(これをアクセスプライシングと呼んでいます)。

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