GMSとは?スーパーマーケットやショッピングセンターとの違いについても解説
小売業態の一つ「GMS」は、利便性の高い小売店舗として消費者のニーズに応えてきたが、そもそもGMSと他の業態の違いをご存知だろうか。似ている業態には、スーパーマーケットやショッピングセンターなどが挙げられるが、それぞれの特徴や業態としての条件は異なる。
本記事では、GMSとはどのような業態なのか、スーパーマーケットやショッピングセンター、他にも挙げられる小売業態について解説する。小売業態について理解を深める際の参考にしてほしい。
GMSとは
GMSとは「General Merchandise Store(ゼネラルマーチャンダイズストア)」を省略した言葉であり、日本では「総合スーパー」と訳されている。具体的には、日常で必要とされる商品を、幅広く取り扱っている大規模な小売店ということだ。
販売業態はセルフサービス方式だが、セルフサービス方式で販売するためには以下の条件を兼ね備えている必要がある。
- ショッピングカードや買い物かごを使用し、客が自由に商品を選び取れる
- 商品は無包装、またはプリパッケージされ、値段が表示されている
- 売り場のレジにて代金を一括で支払える
※売り場面積の50%以上でこれらの方法を採用している事業所が該当
GMSが誕生したのは、1900年代初頭のアメリカ。国土の広いアメリカでは、移動手段として乗用車だけでなく、自家用軽飛行機なども利用された。週末を利用し、家族全員で大量にまとめ買いできることが、アメリカの消費文化を形成するきっかけとなったのだろう。
アメリカのGMSで取り扱っている商品は、衣料品や日用雑貨、家具、家電など幅広い。日本の場合は、さらに食料品も取り扱っており、日本独自の特徴を兼ね備えている。つまり、日本のGMSに行けば、衣食住に必要なものをそろえられるといっていいだろう。
GMSの特徴
GMSには、以下のような特徴が見受けられる。これらの意図や得られる効果について、具体的に解説しよう。
- 標準化された店舗を数多く出店している
- 広告やチラシなどメディアを積極的に利用している
- プライベートブランド(PB)の強化
高品質かつ低価格で商品を提供するためには、好条件で大量に商品を仕入れる必要がある。そのため、仕入れは本部で集中的に行ない、販売は店舗に任せるなど、本部と店舗で役割を明確に分担することが重要だ。このような方法で店舗運営を標準化すれば、運営コストを最小限に抑えられるだけでなく、データをもとにした経営戦略を立てることも可能になる。
広告やチラシなど、あらゆるメディアを活用することで、多くの消費者にアプローチすることが可能だ。この方法で宣伝すれば、ターゲットを絞り込まず効率的に大量販売する、いわゆるマスマーチャンダイジングが実現する。
プライベートブランドに注力する理由は、競合他社との差別化によって優位に立つためだ。従来のプライベートブランドは低価格な印象だが、価格だけでなく品質を重視した商品も販売されている。日本のGMSにおける代表的なプライベートブランドといえば、イオンの「トップバリュー」、イトーヨーカ堂の「セブンプレミアム」が挙げられるだろう。
GMSの代表例
ここでは、日本を代表するGMSを3つ紹介する。以下の3社を参考に、特徴や経営手法に理解を深めよう。
- イオンリテール
- イズミ
- ユニー
イオンリテール
イオンリテール株式会社は、イオン株式会社のグループ企業の一つであり、そのなかでもGMS(総合スーパー)事業に分類されている。そもそもイオンでは14のGMS事業を展開しており、店舗ブランドであるイオンリテールだけでも店舗数は350店舗におよぶ(2022年2月末現在)。
ダイヤモンド・チェーンストアオンラインによれば、2021年におけるGMS売上高ランキングでイオンリテールが1位だと発表している。来店客自身が商品をスキャンする「レジゴー」の導入や、ネットスーパーの強化など、ニューノーマルなライフスタイルへの対応力が、業界トップに君臨する理由ではないだろうか。
イズミ
本拠のある広島市をはじめ、中国、四国、九州にGMSを64店舗展開しているイズミは、特定のエリアに絞って店舗展開するいわゆるリージョナルチェーンだ。特定エリアでの店舗展開とはいえ、日本を代表するGMSイオンリテール、イトーヨーカ堂を追い3番手にいる。
イズミは地元メーカーの商品にこだわったり、来客の属性に対応して駐輪スペースを拡充したりと、消費者に寄り添う誘致方法で業績を上げてきた。このような手法により、業績を好調に推移させたことが“GMSの優等生”と呼ばれる所以になったのだろう。
ユニー
ユニー株式会社は、株式会社パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(略称PPIH)のグループ企業であり、同じ系列にはファミリーマートやドン・キホーテが挙げられる。東海地方を中心に「アピタ」や「ピアゴ」といった多くの店舗を運営しており、不採算店においては業態転換などを実施することで業績の改善を図ってきた。
外出自粛を余儀なくされた時期においては、多くのGMSで業績を維持するのが難しい状況となった。しかし、ユニーは店舗改装などを積極的に行ない、業績を好調に推移させることに成功している。
スーパーマーケット(SM)との違い
SMは「Super Market(スーパーマーケット)」の略称で、既存の市場に対抗する店という意味合いで名付けられた。SMはGMSと同様に店舗を構えており、以下のような定義が設けられている。
- 売り場面積250平米以上
- 衣食住に関わる商品のいずれかの取り扱いが70%以上
- セルフサービス方式を採用している
SMの特徴には、本部の一括仕入れによって低コストを実現していることや、チラシ広告によって大量販売を行なっていることなど、GMSと似ている要素が見受けられる。そのため、規模の大きい店舗ほど価格を抑えて提供することが可能だ。他にも、セルフサービス方式で提供する業態も同様といえるだろう。
しかし、SMは生鮮食料品が中心になることから、購買の傾向や在庫管理はSM独自の対応が必要になるだろう。また、チラシ広告でキャンペーンを実施することで、周辺地域との強い結びつきを生み出している。詳細に比較すれば、GMSとSMは似て非なるものであることがわかるだろう。
ショッピングセンター(SC)との違い
SCは「Shopping Center(ショッピングセンター)」の略称で、開発業者の企画によって作り出される商業施設だ。GMSなどの大型店舗を核として、専門店やアミューズメント施設(映画館など)を合体させた複合商業施設を展開するケースが多い。
GMSを核としてはいるものの、以下のようなSC独自の定義が設けられている。つまり、それぞれ異なる存在として認識しておく必要があるということだ。
- 店舗面積1,500平米以上
- テナント数が10店舗以上(キーテナントを除く)
- テナント会による広告宣伝、共同催事など共同活動を実施している
- キーテナントがSC面積のおよそ80%を超えていない※他テナントのうち小売業の店舗面積が1,500平米以上の場合はこの限りではない
この他にも、駐車場を備えることや、利用者のニーズに応えるコミュニティ施設としての役割を担うことなど、SCに求められる期待は大きい。そのため、SCには医院や娯楽施設、飲食店など、買い物以外の目的にも対応するような店舗や施設も含まれているのが特徴だ。
その他の小売業態
ここまではGMS、SM、SCについて紹介してきたが、店舗を構えた小売業態は他にもある。ここでは、GMS、SM、SC以外の小売業態について、以下を対象に解説したい。それぞれに設けられた条件や特徴に理解を深めよう。
- ホームセンター(HC)
- コンビニエンスストア(CVS)
ホームセンター(HC)
HCは「Home Center(ホームセンター)」の略称で、衣食住のうち「住」に関連のある商品をおもに取り扱っていることから、住関連スーパーと呼ばれることもある。HCにおける業態の条件として、売り場面積が250平米以上であり、なおかつ取り扱う商品のうち住に関連する商品が70%以上でなければならない。
近年のDIYブームに背中を押され、日曜大工に必要な工具、日用雑貨など、幅広く取り扱っているのが特徴だ。他にも、レジャー用品や園芸品なども充実していることから、あらゆる趣味嗜好に応えられるのがHCの魅力といえるだろう。
HCでは多くの商品を扱っているが、そのなかにはプロ向けの商品もある。扱う商品の回転率でいえば生鮮食品などよりも低いが、粗利率の高い商品が多いという特徴がある。
コンビニエンスストア(CVS)
CVSは「Convenience Store(コンビニエンスストア)」の略称で、全国的に展開している小売業である。CVSの特徴として挙げられるのは、比較的小型な店舗が多いことだ。他にも、おもに取り扱っている商品が食品や生活に欠かせない日用品であることも挙げられるだろう。なお、CVSの区分で営業するためには、以下の条件を満たさなければならない。
- 飲食料品を取り扱っている
- 売り場面積は30平米以上、250平米未満
- 一日の営業時間が14時間以上
CVSの9割以上はフランチャイズ契約であり、本部企業の経営ノウハウがマニュアル化されていることから、標準化された店舗経営やスピーディな事業展開が可能だ。CVSの品ぞろえは広く浅い特徴があるため、GMSのような大量仕入れではなく「単品管理」が一般的といえる。
GMSの課題と将来
これまでのGMSは、購入頻度の高い食料品で集客し、原価率の低い衣料品などで収益性を高める構造だった。しかし、しまむらやユニクロなど、大型専門店が台頭し、これまでのGMSにおけるスキームが崩れてきたのだ。そして、2000年代半ばから衰退傾向に突入している。
インターネットが普及し、ZOZOTOWNなどの衣料品ネット通販も台頭したことが、GMSの衣料品販売に追い打ちをかけた。さらに、簡単な買い物であればコンビニエンスストアで済ませられるなど、GMSに立ち寄る機会が失われている。他にも、高品質のものが必要となればブランド力のある専門店で購入するなど、機会損失における理由にも納得せざるを得ない。
もはやGMSはこれまでかと思いきや、売上が伸びている店舗もあるという。それが「地域密着」のGMSだ。チェーン志向へのこだわりを軽減し、消費者の立場に寄り添った事業展開が功を奏したと考えられる。
また、総合スーパーと比較し、食品を専門とするスーパーは好調な傾向にある。これは、安定的な需要が見込めることや、ネット通販では代替が難しいためだろう。このような傾向をもとに、新たな成長モデルを探している企業も増えている。GMSが抱えている課題は、経営手法の変革によって解消していく可能性があるだろう。
まとめ
小売業態の一つ「GMS」は、大量仕入れやプライベートブランドの開発によって、低価格かつ高品質な商品の提供を実現している。しかし、ファストファッションやコンビニエンスストアなど、他業態の台頭によって危機が訪れていることも事実だろう。
そのような課題を乗り越えるべく、近年ではチェーン志向を緩和し、独自の対策を講じるGMSが増えている。今後も他業態と渡り歩くには、時代の変化に適応し、新たな成長モデルを見極める必要があるだろう。