在庫回転率の算出や管理の方法とは?適正な在庫回転率についても解説

読み方:ざいこかいてんりつ
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在庫管理をしている様子
在庫回転率とは、ある一定の期間内で在庫がどれだけ入れ替わったのかを表すもので、在庫管理において重要な指標となるものだ。

在庫管理を行なううえで、在庫回転率は欠かせない指標だ。しかし、在庫回転率が具体的に何を示しているのか、どういう意味があるのかあいまいな状態で使っていることもあるのではないだろうか。また、具体的な求め方や業界ごとの適正な在庫回転率を知りたい人もいるだろう。

今回は、在庫回転率の概要やメリット、求め方などを解説したい。さらに、適正な在庫回転率の決め方や、在庫の改善方法なども紹介する。

在庫回転率が示すもの

まず、在庫回転率とはどのようなものなのか、そこから何がわかるのかを確認しておこう。

在庫回転率とは何か

在庫回転率とは、ある一定の期間内で在庫がどれだけ入れ替わったのかを表すもので、在庫管理において重要な指標となるものだ。商品の仕入れから販売までの速さを示し、例えば、ある商品が平均して10個の在庫を抱えていた場合、一定期間に20個売れたのであれば、在庫回転率は2となる。

なお、在庫回転率は棚卸資産回転率または商品回転率と呼ばれることもある。

在庫回転率からわかること

在庫回転率を求めることで、商品の販売ペースがわかる。回転率が高い場合は売れ行きが好調であることを示し、回転率が低い場合は販売までの期間が長いことを示している。また、数値が高すぎる場合は仕入れ不足による販売機会の損失が起きている可能性もある。

在庫回転率には一律的な理想値があるわけではない。業界によって理想的な数値は異なるほか、商品によっては季節の影響なども考慮しなければならないからだ。そのため、前年数値や同業他社の数値と比較することが一般的だろう。

在庫回転率を把握するメリット

メリット

在庫回転率の把握により得られる具体的なメリットにはどのようなものがあるのだろうか。ここでは、メリットを3つ紹介する。

売れ筋商品や不良在庫がわかる

在庫回転率がわかることで売れている商品と売れていない商品が明らかになり、商品の販売ペースをつかめるだろう。在庫回転率は季節によっても変動するため、こまめに数値を求めることで、季節商品の需要予測をたてる場合にも役立つ。

顧客のニーズを把握できる

在庫回転率が高い商品は売れ行きが良く、顧客の需要が高い商品といえる。短い期間ごとに計算すれば、需要の変化も把握できるだろう。例えば、先ほども説明した季節商品などは、どのようなときに需要が高まるのかを数値で客観的に判断できるようになる。

また、回転率が悪化してきた商品は、需要がさらに減少して損失が悪化する前に在庫を処分するなどの対策が行なえるだろう。

適正な在庫管理ができる

在庫回転率がわかることで需要が明らかになり、売れ筋商品や不良在庫が可視化される。売れにくい商品は仕入れを減らすほか、売れている商品は仕入れを増やして在庫切れを防ぐことが可能だ。このように、コスト削減や販売機会の損失防止に役立つことも在庫回転率を取り扱うメリットだろう。

また、在庫回転率に基づいて倉庫内配置の最適化も行なえるほか、食品のように消費期限や賞味期限があるものは、商品の品質を落とさないサイクルを把握して、品質が落ちる前に販売できる。

在庫回転率の算出方法

在庫回転率の概要やメリットを確認したところで、具体的な求め方を紹介しよう。

在庫回転率の算出方法には金額ベースと個数ベースがある

在庫回転率を求めるには、金額から求める場合と個数から求める場合の2つの方法がある。金額から求める場合は、財務諸表を作成する際や、経営判断を行なう場合に適した方法だ。

一方で、個数から求める方法は、実際の現場で在庫管理を行なう場合に適している。どちらが優れているというものではないため、求められる状況に応じて使い分けよう。

金額ベースでの算出方法

金額から求める場合、次の式を使う。

在庫回転率=期間売上原価/期間平均在庫金額

期間平均在庫金額は、棚卸資産や平均商品在庫高と呼ばれることもある。また、1年間の期間売上原価を求める場合は、次のようになる。

期間売上原価=期首商品棚卸高+当期商品仕入高-期末商品棚卸高

期間平均在庫金額は、対象期間の平均を求める必要があり、式は次のようになる。

期間平均在庫金額=(期首在庫高+期末在庫高)/2

具体例を挙げてみよう。

期間売上原価:3,000万円
期首在庫高:2,000万円
期末在庫高:1,000万円

期間平均在庫金額=(2,000万+1,000万)/2=1,500万円
在庫回転率=3,000万/1,500万=2

金額から求める場合は決算書のデータが必要となる。そのため、1年間で求めるのが一般的だ。

個数ベースでの算出方法

個数から求める場合は、次の式を使う。

在庫回転率=期間出庫数/期間平均在庫数

期間出庫数とは対象期間に出庫した商品の総数だ。期間平均在庫数は金額から求める場合と同様に、期間内の平均を次の式で求める。

期間平均在庫数=(期首在庫数+期末在庫数)/2

具体例で計算してみよう。

期首在庫数:70個
期末在庫数:30個
期間出庫数:400個

期間平均在庫数=(70+30)/2=50
在庫回転率=400/50=8

となる。

このように個数から求める場合では、在庫数と出庫数がわかれば良いため決算書は不要だ。そのため、1ヵ月単位などいつでも求められるのがメリットだろう。

適正な在庫回転率と在庫高は?

適正な在庫回転率と在庫高はどのようにして求めれば良いのだろうか。それぞれの導き方を紹介する。

目標在庫回転率を決めることで適正在庫高が決まる

適正な在庫高とは、余剰も不足もない理想的な在庫の状態だ。適正在庫高を求めるには次の式を使う。

適正在庫高=期間売上原価/目標在庫回転率

目標在庫回転率を設定すれば、適正在庫高が決まる。期間売上原価は先ほど説明したように以下の式で求められる。

期間売上原価=期首商品棚卸高+当期商品仕入高-期末商品棚卸高

目標在庫回転率の算出方法

目標在庫回転率とは、自社が目標とする回転率のことだ。求めるには次の式を使う。

目標在庫回転率=年間の目標売上金額/目標平均在庫金額

目標在庫回転率の理想値は一律に決まっているものではなく、業種や商品によって異なる。したがって同業他社の数値や、経済産業省が発表しているデータなどを参考にするとよいだろう。

各業界の在庫回転率の一例

参考までに、先ほどの経済産業省が発表しているデータから製造業と卸売業の在庫回転率を紹介しよう。

製造業

業種 在庫回転率(回)
プラスチック製品製造業 17.0
ゴム製品製造業 16.7
食料品製造業 16.6
パルプ・紙・紙加工品製造業 16.2
衣服・その他の繊維製品製造業 7.3
繊維工業 7.1

出典:4.中小企業の商品(製品)回転率|商工業実態基本調査|経済産業省

卸売業

業種 在庫回転率(回)
飲食料品卸売業 24.2
建築材料、鉱物・金属材料等卸売業 19.0
各種商品卸売業 18.0
繊維・衣服等卸売業 8.0

出典:4.中小企業の商品(製品)回転率|商工業実態基本調査|経済産業省

この表を見ると、卸売業は製造業と比べて回転率は高めだ。これは、製造業では製品ができあがるまで時間がかかることが理由として挙げられるだろう。

また、製造業と卸売業に共通して、消費期限・賞味期限が設定されている食品や飲料を扱う業種では回転率が高く、消費期限のない繊維や衣服を扱う業種では回転率が低めであることもわかる。

在庫回転率による在庫管理と改善方法

5Gによるビッグデータのイメージ

在庫回転率により在庫管理を行なう手順や、在庫回転率を改善する方法を紹介する。

在庫回転率による在庫管理

在庫回転率による在庫管理を行なう具体的な手順は以下のとおりだ。

  1. 同業他社の在庫回転率などを参考に目標在庫回転率を設定する
  2. 定期的に在庫回転率を求めて、目標在庫回転率との比較を行なう
  3. 在庫の見直しにより、状況を改善する

前述したように、目標在庫回転率の設定には自社の売上げ目標や、経済産業省のデータなどを参考にするとよいだろう。

在庫回転率を改善するには

在庫回転率を改善するには、以下の点を確認してみると良い。

  • リードタイムの確認
  • 販売価格の見直し
  • ITシステムの導入

在庫管理でのリードタイムとは「発注から納品までにかかる時間」をさす。リードタイムの短縮は顧客満足度の向上につながり、リピーターが増える要因になるだろう。それにより在庫回転率の改善も期待できる。

在庫回転率が低い商品があれば、販売価格を検討する必要がある。回転率が低いということは価格が高すぎる可能性があるからだ。こうした商品の場合、回転率が改善されるような販売価格の設定が求められるとともに、現在の在庫は不良在庫化する前に値段を下げて販売する必要があるだろう。

ITシステムは、取り扱う品目や店舗が多い場合に有効だ。POSシステムや在庫管理システムなどITの導入により、在庫回転率や在庫の状況をリアルタイムで把握できる。

在庫回転期間を併用するとさらに適正な在庫管理が可能

在庫回転率と似た指標に「在庫回転期間」というものがある。在庫回転期間とは商品が入荷してから出荷するまでの期間のことだ。在庫回転期間を求めることにより、在庫を何日分抱えているのかがわかる。現場では、在庫回転期間のほうが現状を理解しやすいだろう。

在庫回転期間は以下の式で求められる。

在庫回転期間=棚卸資産/売上原価

例えば、棚卸資産が300万円で、年間の売上原価が1,500万円の場合は次のようになる。

在庫回転期間=300万/1,500万=0.2(年)

日数単位で求めたい場合は、年間売上原価を365で割れば良い。

在庫回転期間=300万/(1,500万/365日)=73(日)

同様に年間売上原価を12で割れば、月数単位で在庫回転期間を求められる。

在庫回転率が高く、かつ在庫回転期間が短い商品は適切に在庫管理ができているといえるだろう。このように在庫回転期間も併用することで、より適正な在庫管理が行なえるようになる。

まとめ

在庫回転率とは、一定期間で在庫がどれだけ入れ替わったかを示す指標だ。数値が高ければ売れ行きが良いということになり、低ければ売れ行きが悪く不良在庫化するおそれがある。在庫回転率を理解することは、顧客の需要を把握することにもつながるだろう。

在庫回転率は金額から求める方法と個数から求める方法の2通りがあり、現場における在庫管理の判断材料にするには個数から求める方法が適している。目標となる在庫回転率は、同業他社や統計データを参考にするとよいだろう。

回転率から、リードタイムや販売価格の検討などを行なうと在庫管理を改善できる。ほかにもITシステムの導入も有効だ。在庫回転率をこまめに出して、適正な在庫管理を行なうことが望まれる。

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