自己資本比率とは?高ければ高い方がよい?意外なデメリットや、自己資本比率の高い企業・低い企業の実例を紹介
自己資本比率とは
自己資本比率とは、総資産に占める自己資本の割合のことで、自己資本÷総資産(自己資本+負債)の算式で計算する。たとえば、自己資本が350万円・負債が650万円の企業の自己資本比率は、350万円÷(350万円+650万円)=35%となる。自己資本とは単刀直入にいえば返済する必要のない自前の資金で、負債は返済義務を負う借入金などを意味する。
ちなみに、自己資本は貸借対照表(企業の財務状態を数値化したレポート)上、以下の要素で構成される。
・株主が出資した資本金
・資本準備金
・企業が創業以来稼いできた利益の蓄積である利益準備金や剰余金
赤字続くと毎年の損失が資本を食いつぶし、ついには資本がマイナスになることもありうる。つまり総資産を負債が超過する状態で、これを債務超過という。
自己資本比率が高いことのメリット
自己資本比率が高いことのメリットとして、経営の安定性と融資の受けやすさが挙げられる。
経営的な安定性
自己資本比率が高いということは、借入金の返済負担が低く、経営的に安定していることを意味する。また、自己資本比率が高いことで、経営的な打撃を受けた時のレジリエンス(自己回復力・弾性力)も強い。
今般のコロナショック時に、日本企業の多くが急激な業績悪化に見舞われたにかかわらず破綻や倒産にまで追い込まれるケースが世間の想像よりも少なかったのは、日銀や金融機関による大量の資金供給も寄与しているものの、平均50%を超える自己資本比率が大きかったといわれている。1990年代の平均自己資本比率は35%強に過ぎなかったが、バブル崩壊後の金融危機やリーマンショックなど、何度もピンチに遭遇してきた反省から、倒産の危機を回避すべく日本企業は自己資本を増強してきた。今回のコロナ禍で、長年の努力が報われたともいえる。
融資を受けやすい
融資審査に当たって金融機関が重視するのが、安定した業績と財務の堅実性だ。堅実性判定の定量的エビデンスが自己資本比率であり、比率が高ければ金融機関からの融資を受けやすい。
自己資本比率が高いことのデメリット
自己資本比率を高めることは、企業の収益性や成長性にはマイナスに働く場合もある。一体どういうことか?(以下、自己資本比率が低いことを主語に最後までメリットを語っているので、わかりにくくなっている)株主の立場から見れば、企業には借金をしてでも積極的に店舗を増やしたり、新しいビジネスをはじめたりしてもっと利益を挙げて欲しいと考える。借金が増えれば自己資本比率は低下するが、成長による恩恵で業績は向上し、株主も利益還元増で潤う。いわゆる「レバレッジ」効果だ。投資する成長分野がなければ、配当や自社株買いで株主に直接還元すればいい。
ここ10年あまり、米国企業はレバレッジ効果の追求を続けてきた。結果として株価が大きく上昇した一方で、平均自己資本比率は2007年に5割近かったものが、コロナ禍直前で4割を切る水準まで低下した。
まとめると、経済が好循環で回っていて業績も好調な限りは、レバレッジ効果を追い求めたほうが株主も喜び、経営者にも多額のインセンティブ報酬が転がり込む。経営危機におびえるあまり自己資本比率の高さだけにこだわるのはばかげている、と経営者が考えてもおかしくない。
つまり、自己資本比率が高いということは、経営の安定性と引き合いに、成長および収益の最大化機会を逸しているとも考えられるわけだ。
自己資本比率が高い・低い企業の実例
自己資本比率が高い企業としてキーエンス(大阪府/中田有社長)、低い企業としてソフトバンクグループ(東京都/孫正義会長兼社長)を取り上げる。
自己資本比率が高い企業の実例:キーエンス
ファクトリーオートメーション機器トップメーカー、キーエンスの自己資本比率は95%を超える(2021年3月現在)。高ROE(株主資本利益率:収益性を測る指標の1つ)で有名な同社は徹底した無借金経営でも知られ、貸借対照表の負債の部には仕入れ債務や未払い法人税など最低限の項目しか並ばない。保有するキャッシュも潤沢だ。
自己資本比率が低い企業の実例:ソフトバンクグループ
ソフトバンクグループの自己資本比率は15.9%(2020年3月期決算)と日本企業平均の50%強よりかなり低い。同グループは、資金の大部分を社債発行や銀行からの借入金に頼り、調達した数兆円単位のマネーをアリババ集団・スプリントグループといった企業の買収やソフトバンク・ビジョン・ファンドへの出資に充て成長を遂げてきた。