値ごろ感とは?工夫によっては操作もできる?その仕組みを徹底解説!
値ごろ感とは
値ごろ感とは「売買するうえで手ごろな価格」である。株式市場では「売りごろ価格」の意味でも使われるが、小売業では消費者にとっての「買いごろ価格」を意味する。ここでは、小売業における値ごろ感について述べる。
消費者が抱く値ごろ感とは、商品の品質・性能・用途から見て妥当な価格のことだ。あくまで主観的なものなので、個々の消費者の経済力や価値観に左右される。ただし、当人の経済力にかかわらず「常識」や「世間の通り相場」も値ごろ感に影響を与える。
値ごろ感を探る「価格感度分析(PSM分析)」
値ごろ感には「お買い得感」というニュアンスも含まれる。売り手は「仕入れ価格+経費+利益」という発想だけでプライシングをすると、消費者のお買い得感、つまり値ごろ感から外れてしまう恐れがある。
そこで、消費者のお買い得感を探るために次のような4択アンケートをするのが「価格感度分析(PSM分析)」だ。
- この商品が幾らくらいから「高い」と感じ始めますか
- この商品が幾らくらいから「安い」と感じ始めますか
- この商品が幾らくらいから「高すぎて買えない」と感じ始めますか
- この商品が幾らくらいから「安すぎて信頼できない」と感じ始めますか
充分なサンプル数でこのアンケートを行い、集計してグラフ化するなどの作業を経て導かれるのが、次の4つの価格である。
最高価格:これを超えて高いと絶対買わない
妥協価格:このくらいならしょうがない
理想価格:このくらいの価格であって欲しい
最低品質保証価格:これ以上安いと品質が疑わしいと感じ、買いたくなくなる
つまり、さまざまな価格感度を持つ消費者の平均値としての最高価格や妥協価格などが導かれるのだ。この4つの中で、いわゆる値ごろ感に最も近いのが「妥協価格」である。
さて、プライシングには、売り手サイドに立つ「コスト志向型価格設定」、消費者サイドに立つ「価値志向型価格設定」、市場環境を重視する「競争志向型価格設定」の3つがある。売り手にとってはどれも無視できない基準だが、値ごろ感とはこれらの価格設定の「落としどころ」とも言えるだろう。
値ごろ感の操作
たとえばある商品を「1000円ではなく980円に」「2000円ではなく1980円に」とプライシングする。すると、消費者はそれぞれを「1000円台、2000円台」ではなく、「100円台、1000円台」だと“錯覚”し、商品を割安だと感じる。これを「値ごろ感の操作」と呼ぶ。このように、数字が与える印象でも、値ごろ感というものは変わってしまうのだ。
また、消費者が感じる商品価値を上げることによっても、値ごろ感は操作できる。その方法の1つが、商品価値の徹底的なプレゼンテーションである。たとえば、「通販生活」は雑誌の記事のような体裁で1個1万円以上する枕を数ページかけて徹底的にアピール。そうすることで、消費者のなかで商品価値が上がり「これだけいい商品だからこそ1万円でも値ごろなのだ」と印象付けることに成功した。結果、その枕はヒット商品へと成長したのである。