バイヤーとは何か?仕事内容や求められる能力やなり方について解説!
小売業界やアパレル業界などで活躍する「バイヤー」。バイヤーについて、「商品の買い付けを行う職種」という程度は把握しているものの、それ以上はあまり把握していない人は少なくないでしょう。
この記事では、バイヤーの概要をはじめ、仕事内容や求められる能力、バイヤーになる方法について解説します。
バイヤーとは何か?
バイヤーとは、流通チャネルにおける仕入れ担当者のことを指します。本来は仕入れのみが業務の範囲内ですが、チェーンストアにおけるバイヤーは一般的に、サプライヤーから商品を集め各店舗に配荷するまで一手に担うケースが多くなります。
マーチャンダイザーが商品の設計・開発までコミットするのに対し、バイヤーは設計・開発にはかかわりません。
大企業の場合はバイヤーとマーチャンダイザーが分業されていますが、一般的なチェーンストアではこれらを兼務するケースも少なくありません。
バイヤーのおもな仕事は、以下のとおりです。
- トレンドをリサーチして情報収集を行う
- 顧客データを分析し、購買傾向などを把握する
- 自社が買い付けを行う商品を選定する
- メーカーに対し、仕入れ価格や数量、支払時期、輸送方法、返品に関することなどの交渉を行う
- 自社での販売価格を決定する
小売業界においてバイヤーの仕事は、広報などにならぶ人気職種の1つとされています。「世界中を出張して自分の感性で買いまわる」といったイメージを持たれがちですが、現実はそれほど単純ではありません。
バイヤーに託された役割は広くかつ複雑で、利害関係者も多岐にわたります。まずは、サプライヤーとの調整。大手流通チャネルのバイヤーのもとには、メーカーの本部営業担当者が日参します。仕入数量・価格やボーナスリベート決定からはじまり、納期遅れ・欠品対応や売れ残り品の返品要否など、交渉すべき問題は山積します。
新規のサプライヤー開拓・PB商品開発など競合他社の動向・国内外の商品トレンドといった情報収集も大切な役割です。
さらにバイヤーは社内で各店舗と調整を行います。新商品の各店舗への配荷数量、フェーシング、定価など調整範囲は広くなり、商品クレーム対応に関わることもあります。
大手流通チャネルの中には、バイヤー機能を分化させ、部門を別に設けているところもあります。
バイヤーが行う具体的な仕事内容
バイヤーの仕事にはいくつかの種類があり、業界によって業務内容も異なります。バイヤーは仕入れる商材や業務範囲によって、以下の4種類に分けられます。
- 仕入れバイヤー
- 間接材バイヤー
- 直接材バイヤー
- 原料バイヤー
それぞれの特徴や仕事内容について見ていきましょう。
仕入れバイヤー
仕入れバイヤーは、流通業や小売業を中心に活躍する買い付け担当者を指し、おもに小売店などで売れそうな商品の発見、価格や個数の交渉、商品の買い付けなどを行います。
近年はECサイトの増加が影響し、実店舗を有する企業以外にも活躍の場を広げ、需要が高まっています。それにともなって働き方も変化しており、企業への所属以外に、独立してフリーで活動する仕入れバイヤーも少なくありません。
間接材バイヤー
間接材バイヤーは、製造業やサービス業などにおいて資材の調達・購買を行う担当者を指します。後述する直接材バイヤーも、製造業などを中心として活動する点は共通しているものの、調達する資材が異なります。
間接材バイヤーは、企業の運営において必要となる経費購買品全般の調達・購買を行うことが仕事です。サービス業を例に挙げると、デスクやパソコン、事務用品、販促品などが該当します。
また、間接材は経費購買品であることから、間接材バイヤーが経理を兼任して交通費や通信費、交際費といった経費管理を行うことも少なくありません。
直接材バイヤー
前述のとおり、直接材バイヤーも製造業やサービス業などにおいて資材の調達・購買を行う担当者です。直接材バイヤーは、企業の売上に直結する資材の調達・購買を行うことが仕事です。工場を例に挙げると、部品や原材料などが該当します。
生産に必要な資材を適切なタイミングや量で調達するスキルと、高品質な資材を安定的かつ低コストで調達できるよう交渉する能力が重視されます。そのため、直接材バイヤーは企業活動で必要不可欠な業務を担っているといえます。
原料バイヤー
原料バイヤーは、鋼材・金属・石炭・木材・原油・レアアースなど、いわゆる工業製品の原材料となる資材を購入する担当者を指します。おもに原料メーカーから買い付けることになるでしょう。
世の中にある工業製品や食料品、家電製品などはこれらの原材料から作られているため、原料バイヤーは常に良質な材料を選定しなければなりません。
原材料を仕入れる点では直接材バイヤーと共通ですが、求められるスキルが異なります。原材料の市場価値は変動頻度が高いため、先物予約を行うなど状況に合った最適な手法を選び、変動リスクを回避する必要があります。
原材料の買い付けは企業にとって重要であることから、原料バイヤーには先を読んだ買い付け能力が求められます。
バイヤーに求められる能力
バイヤーとして活躍するためには、おもに次の4つの能力が求められます。
情報収集力と分析力
バイヤーに欠かせないスキルといわれているのが、トレンドを先読みするセンスです。ただし、センスに頼った買い付けばかり行うと、店舗やECサイトで商品が売れず損失を出す危険性が増します。
こうしたリスクを回避するため、バイヤーには市場のトレンドや消費動向の情報を収集し、自社の顧客データなどから顧客のニーズや購買傾向を分析するスキルが必要です。
商品知識
バイヤーの仕事は、時代に合わせて売れる商品を見つけ出す業務がメインです。商品の価値を見定める能力が問われますが、そのためには豊富な商品知識が必要です。商品知識を多く身に付ければ、顧客がほしいと思える良質な商品を選ぶことができます。
買い付けの際に的確な比較や価格交渉を行うためにも、バイヤーにとって商品知識は必須といえるでしょう。
交渉術
企業の利益を考慮し、バイヤーはメーカーや商社との価格交渉を行ないます。できる限り低コストで仕入れを行うには、交渉術が欠かせません。
バイヤーが交渉を行うのは価格だけではなく、仕入れ数量や納期、支払時期、輸送方法などが含まれます。いかに、相手とコミュニケーションをとって交渉を進めるかが重要です。
語学力
バイヤーが担当する商品によっては、海外へ買い付けに行ったり、海外の担当者とのやりとりが発生したりするケースもあります。外国語の習得は必須ではないものの、語学力があると交渉がスムーズに進むでしょう。
バイヤーになる方法
実際に、バイヤーになるにはどうすればよいのでしょうか。
未経験の場合、最初からバイヤー職に就くことは難しいでしょう。バイヤーに求められる、店舗運営能力や市場ニーズを把握する能力、商品知識を身に付けるためには、現場で実務経験を積まなければなりません。
多くの企業では、店舗販売員、マネージャーとキャリアアップしながら商品知識をつけ、それからバイヤーになるというキャリアパスが一般的です。
または、バイヤーのアシスタントからスタートし、経験を重ねてからバイヤーを目指すことも可能です。ただし、この場合も現場での実務経験が求められることがあります。
バイヤーを目指すうえで取得必須の資格は特にないものの、前述のバイヤーに求められる能力に付随した資格や外国語の習得は、バイヤーを目指す際に有利になるでしょう。
商品カテゴリーとエリア
医薬品・化粧品・食品・衣料・家電など業態によって異なりますが、小売店が扱う商品カテゴリーは多岐にわたります。カテゴリーごとの「目利き力」を持ったバイヤーをいかに育てるかは、企業にとって重要な課題です。
一方で商品仕入れには、販売エリアの特性も考慮しなければいけません。商品カテゴリーとエリア、2つのマトリクスをどうバランスさせていくかは、バイヤーの腕の見せ所となります。
バイヤーのミッション
バイヤーのミッションの1つには、自社における調達力向上による商品コスト圧縮があります。たとえば鮮魚の場合、販売を漁業者から委託された漁業協同組合、産地から消費地への出荷業者、消費地の卸業者さらには仲卸業者を経てようやく小売業者の手にわたります。
小売業者がバイヤー機能を高めれば、流通機能の一部の代替も可能になり、中間マージンを圧縮できます。それだけでなく、生産者と共同での商品企画・開発も実現できるようになります。
バイヤーの課題
バイヤーが抱える課題としては、業務負荷や人件費の増加があります。GMSや大手ドラッグストアの場合、店舗オペレーションの効率化をめざし、管理・調達機能の本部集中と店舗の販売専念を進めてきました。言い換えれば、販売の分散と仕入の集中です。
一方で小規模に多店展開する小売専門店や地方食品スーパーなど、スケールメリットが期待できない企業では同じ真似はできません。むしろ、評判の良いホールセールや商社の「目利き」に委ねたほうが得策の場合が多くなります。
バイヤーの実例として、成城石井の取り組みについて紹介します。“少しだけ贅沢な品揃え”を強みとする成城石井はコロナ禍にあっても快進撃を続けています。これを支えているのが、開発担当者に加えて30人前後のバイヤーたちです。
成城石井で販売する生鮮食品などは、生産者から直接仕入れる体制をとっているためか、一般的な食品スーパーで売っているものとは明らかに違います。チョコレートをはじめとした菓子も海外品・国産品ともにアイテムが豊富で、しかも他で見かけることがほとんどないものばかりです。
成城石井のバイヤーは、商品カテゴリーごとに担当が分かれています。決して問屋まかせにしたりせず、つねに各地を飛び回り情報を集めている。だからこそ、他社と差別化した商品の提供が実現できるのです。
まとめ
取扱商品の選定や買い付け業務の担当者はすべてバイヤーと呼ばれています。携わる業界によって業務内容が変わり、仕入れバイヤー・間接材バイヤー・直接材バイヤー・原料バイヤーの4種類に大きく分けられます。いずれも情報収集力や分析力、商品知識、交渉術などの能力が必須です。
近年、EC市場の躍進によって活躍のステージは広がっており、今後も期待できる職種といえるでしょう。未経験からのスタートは難しいため、バイヤーとして働きたい場合は現場経験を積みながら目指されてはいかがでしょうか。