食品衛生法とは?概要や目的、各条項の内容、7つの改正ポイントについてわかりやすく解説

読み方:しょくひんえいせいほう
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食品衛生法は、食中毒など飲食に起因する衛生上の危害を防止し、食品の安全性を確保するために1947年に制定された法律だ。

食品衛生法の名前はよく聞くものの、具体的な内容がわからないため、詳しく知りたいという人もいるのではないだろうか。2018年に食品衛生法は大きく改正されているため、違反にあたる行為をしないよう、改正内容はしっかりと把握しておきたいところだ。

本記事では、食品衛生法の概要や目的、食品安全基本法との違い、各条項の具体的な内容、改正された7項目について解説する。

食品衛生法とは

まず、食品衛生法とはどのような法律なのかを説明する。

食品衛生法の概要と目的

食品衛生法は、食中毒など飲食に起因する衛生上の危害を防止し、食品の安全性を確保するために1947年に制定された法律だ。

具体的には、食品・添加物・器具や容器包装・表示や広告・行政による監視指導・検査・営業許可などが定められている。このほかにも、有害な食品の販売禁止や食中毒の防止についても規定が設けられている。

2018年には、日本の農水産物・食品の国際競争力を高めて食を取り巻く環境の変化や国際化に対応するため、大規模な改正が実施された。

食品安全基本法との違い

食品衛生法とよく似た法律に「食品安全基本法」があるが、食品安全基本法は2003年に制定された法律だ。リスク分析の手法を取り入れ、食品安全の法律や組織体制を再整備するために制定された。

食品安全基本法が制定された背景には、国内でBSE(牛海綿状脳症)が発生し、食の安全に対する不安が大きくなったことがある。食品安全基本法と食品衛生法は、食品安全基本法が母体で、食品衛生法は食品安全基本法を支える法律の一つという関係になる。

食品衛生法の具体的な内容

保健所

食品衛生法は具体的にどのような内容なのか、順番に見ていこう。

第一章:総則

総則には、食品衛生法の目的や行政の役割、対象となる事業者、各用語の定義などが記載されている。

第一条では、「飲食に起因する衛生上の危害の発生を防止し、もつて国民の健康の保護を図ることを目的とする」と明記されている。

第二章:食品及び添加物

第二章では、食品や添加物に関する規定が設けられている。食品を清潔かつ衛生的に扱うことや、扱ってはならない食品の規定などがおもな内容だ。

また、有事の際の厚生労働大臣の各種権限も記載されている。2018年の改正で、特定食品に関する健康被害情報の届出義務化や、輸出入食品に関する安全証明制度の強化が規定されているのも第二章だ。2018年の改正内容はのちほど詳しく説明する。

第三章:器具及び容器包装

第三章では、食品や添加物に使用する器具・容器包装について規定している。器具などが清潔かつ衛生的であることや、器具などの原材料に関する規定が記載されている。

第四章:表示及び広告

第四章では、食品や添加物の表示に関して、食品表示法に則ることが明記されている。また、公衆衛生に危害をおよぼすおそれがある、虚偽・誇大な広告を禁止しているのも第四章だ。

第五章:食品添加物公定書

第五章では、厚生労働大臣または内閣総理大臣が、添加物の規格や基準に関する食品添加物公定書を作成すると規定されている。

第六章:監視指導

第六章では、食中毒患者の発生・拡大を阻止するため行政が行なう、監視指導が規定されている。監視指導で厚生労働大臣が担う役割のほか、都道府県知事などが年度ごとに都道府県等食品衛生監視指導計画を定めることが記載されている。

2018年の改正で設置された、広域連携協議会が規定されているのも第六章だ。

第七章:検査

第七章では、食品や添加物だけでなく器具や容器包装も規定の検査を受け、合格する必要があると明記されている。2018年の改正で定められた「食品用器具・容器包装のポジティブリスト化」の記載があるのは第七章だ。

第八章:登録検査機関

第八章では、食品や添加物などの検査を行なう検査機関について規定されている。具体的には、検査種類ごとの管理者の設置、文書面の整備、業務管理・精度確保を目的とした部門の設置など、登録の条件や登録手続きなどが定められている。

第九章:営業

第九章では、食品や添加物の製造・加工を行なう施設に必要な食品衛生管理者について、規定されている。食品衛生管理者を置いたときは15日以内に行政への届出が必要であることや、食品衛生管理者になる方法などが定められている。

2018年の改正で定められたHACCPや自主回収について、規定されているのも第九章だ。

第十章:雑則

第十章では、第九章までで扱われなかった項目が規定されている。国庫が都道府県または市の費用の半分を負担することや、食中毒患者を検診した医師は届出が必要であることなど、細かな規定がおもな内容だ。

第十一章:罰則

第十一章では、食品衛生法の各条に違反した場合の罰則が規定され、懲役期間や罰金額が定められている。

附則

附則では、食品衛生法の施行日や過去に廃止された法律などが記載されている。

食品衛生法における7つの改正内容

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食品衛生法は2018年に大きく改正されているが、具体的にはどのように改正されているのだろうか。ここでは、改正された7つのポイントを説明する。

大規模な食中毒への対策強化

まず、大規模な食中毒事案が発生した場合の対策強化が定められた。これは、2017年に関東地方で発生したO-157による、広域的な食中毒事案が教訓となっている。

この事案では、自治体間の情報共有体制がなかったことが被害を拡大させた一因となった。その反省から、自治体間で情報共有できる体制が定められ、事態が深刻な場合は厚生労働大臣が広域連携協議会を設置し、国と自治体の間でも連携体制が構築されるようになった。

HACCP(ハサップ)による衛生管理の制度化

2点目は、HACCP(ハサップ)の制度化だ。HACCPは「Hazard Analysis and Critical Control Point」を略したものであり、国際的な衛生管理手法の一つを指す。

HACCPは、原材料の受け入れから製造、出荷までの一連工程で、食中毒などの危険要因を科学的根拠に基づいて分析・管理し、食品の安全性を確保する手法だ。一貫した管理により、事故防止や事故発生時の原因究明に役立てられる。

HACCP自体は、2018年の法改正以前から導入が進められていたが、義務ではなく中小企業では導入が進んでいなかった。この改正で、HACCPによる衛生管理の導入が義務化されたというわけだ。

特定食品に関する健康被害情報の届出義務化

特定食品とは、特別に注意が必要な成分を含む健康食品を指す。これらの食品で健康被害が発生した際には、事業者が行政へ届け出ることが義務化された。

届出の義務化により、健康被害に関する情報を収集・分析して特定の成分を含む食品の健康被害リスクを明らかにし、国民に対して正しい情報を届けることが可能となる。

食品用器具・容器包装のポジティブリスト化

食品用器具や容器包装には、安全性評価がなされた物質のみを使用可能とするポジティブリスト制が導入された。

「ポジティブリスト」とは、安全性が確認されたものだけをリスト化して、許可する制度だ。一方で「ネガティブリスト」では、禁止されるものだけをリスト化している。一般的に一部のみを禁止したい場合にはネガティブリスト、一部のみを許可したい場合にはポジティブリストが使われる。

法改正前はネガティブリストが採用されていたが、事後に危険性が判明した場合でも、ただちに禁止できないデメリットがあった。国際的にはポジティブリストが一般的なため、改正により国際基準に合わせたものといえる。

営業許可制度の見直し・営業届出制度の創設

営業許可制度は1972年以降見直されていないことから、実態に合わない部分があった。しかし、2018年の改正によって衛生管理がHACCPに沿って制度化され、現在の食品産業の実態に合わせて営業届出制度も見直されている。

具体的には、3つのポイントについて以下のように整理された。

  • 営業許可業種:34業種から32業種に整理
  • 要届出業種:温度管理が必要な包装食品の販売業や冷凍冷蔵倉庫業などは、営業許可業種から要届出業種に
  • 届出対象外業種:常温保存可能な包装食品のみの販売など、公衆衛生に与える影響が少ない業種は届出不要に

これにより、地方自治体での食品関連事業者の正確な把握や監視・指導が可能となった。

自主回収(リコール)情報の行政報告義務化

自主回収(リコール)を行なう場合、自治体を通じた国への報告が義務化された。それまでも都道府県によっては報告が規定されている場合もあったが、改正により全国統一基準が設けられたものだ。

報告された内容は厚生労働省のサイトなどで公表されるため、消費者にも対象商品や内容が確認できるようになった。

輸出入食品に関する安全証明制度の強化

法改正により、輸出入食品の安全証明制度が強化された。輸入では、食肉のHACCPによる衛生管理や水産食品・乳製品への衛生証明書添付を義務化し、相手国で適切に検査・管理が行なわれていることの証明が求められる。

また、輸出の際は相手国の衛生要件を満たしていることを証明するために、国や自治体の衛生証明書発行手続きが規定された。具体的な手続きは「農林水産物及び食品の輸出の促進に関する法律」で定められる。

まとめ

食品衛生法は、食中毒などの衛生上の危害を防止し、食品の安全性を確保するために制定された。食品や添加物のほか、容器や表示、検査、営業許可などについて規定されている。

食品衛生法は2018年に大きく改正された。改正されたポイントをもう一度おさらいしておこう。

  • 食中毒への対策強化
  • HACCPの制度化
  • 特定の健康食品に関する健康被害情報の届出義務化
  • 食品用器具などのポジティブリスト化
  • 営業許可制度の見直し
  • リコール情報の報告義務化
  • 輸出入食品に関する安全証明制度強化

食品製造業や飲食業など、食品衛生法が関係する業種に就いているのであれば、改正内容はしっかりと把握して対応できるようにしておきたい。

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