高級ブランド店や百貨店が立ち並ぶ東京・銀座で、格安スーパーや100円ショップなど低価格を売りにした店が存在感を増している。日本を代表する繁華街を足掛かりに知名度を上げるのが狙いで、節約志向の消費者の心をつかみ、いずれも盛況。百貨店関係者から「おしゃれをして買い物に来る街が、普段使いの街に変化しつつある」との声も聞こえてきた。
「安い。銀座とは思えない」。17日に新規開店したディスカウントスーパー「オーケー」を訪れた60代の女性は興奮気味に語った。売り場には定番の税別299円の「ロースかつ重」が積み上げられ、昼休み中の会社員らがこぞって買い求めていた。閉店前、総菜の棚はほぼ空っぽだった。
オーケーが出店した商業施設には、カジュアル衣料の「ユニクロ」と100円ショップ「ダイソー」の旗艦店が入居する。いずれもデフレ経済を象徴する存在で、店内は日本人だけでなく、多くの外国人観光客でにぎわう。ダイソーを運営する大創産業(広島県東広島市)は「ここからメッセージを発信し、認知度向上を目指す」と意気込む。
銀座三越や宝飾品店「和光」、海外ブランドの路面店が集う銀座四丁目交差点付近のビルには、100円ショップ「セリア」と衣料品「ワークマンカラーズ」が進出。ワークマンの担当者は「小売業にとって銀座はあこがれ。ブランド力が上がる」と期待する。開店以降、各地の商業施設から出店オファーが増えたという。
消費の二極化で、老舗の高級店も活況を呈している。富裕層や訪日客に支えられ、松屋銀座は既に月間売上高がコロナ禍前を上回った。銀座通連合会の竹沢えり子事務局長は「100年の歴史で見れば盛衰のある街」と分析し、「『銀座はサービスが違う』と思ってもらえれば生き残れる。格安店も同じ」と語った。