資源価格の高騰や円安による輸入品の値上がりを受け、小売り段階での物価上昇が顕著となってきた。4月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除く)は、前年同月比2.1%上昇と7年1カ月ぶりの高水準を記録。日銀が達成を目指す2%の物価目標を上回った。ガソリンや食料品など生活必需品の値上がりが目立ち、賃金の伸びが物価に追い付かなければ、消費が冷え込む恐れもある。
消費者物価は3月の0.8%上昇から伸びを一気に高めた。これは従来、指数を押し下げてきた携帯電話通信料の引き下げ要因が剥落し、資源高の影響が一気に表面化したためだ。
企業間で取引されるモノの価格を示す企業物価は、4月に10.0%上昇と、比較可能な1981年以降で最大の伸びとなっていたが、「川下」の消費者物価にも上昇圧力が波及してきた格好だ。
一方、日銀はエネルギー価格の上昇を主因とした最近の物価上昇は「持続しない」(黒田東彦総裁)と見込んでいる。インフレが進行する欧米の中央銀行が金融引き締めに動く中、日銀は現在の大規模緩和を継続する構えだ。
ただ、金融緩和を続けて内外の金利差が拡大すれば円安がさらに加速し、物価を押し上げる悪循環を招くリスクがある。野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは「生活必需品の値上がりは国民の打撃が大きい。賃金が物価上昇に追い付いておらず、消費者はどんどん貧しくなっている」と指摘する。