セブン-イレブンの7NOW全国展開へ!拡大するクイックコマースへの“懸念”とは
店舗でのピッキングと高密度な店舗網
配送費用については、クイックコマース各社は基本的にギグワーカーの活用によってコストを抑えるという手法をとっており、この点では7NOWと他社サービスに大きな違いはなかったと考えられる。
ギグワーカーとは、ウーバーイーツ(Uber Eats)に代表されるようなデリバリープラットフォーマーのシステムを通じて単発の配送を請け負う個人事業主(依頼主との雇用契約はない)だと言えば、おわかりいただけるであろう。
では、撤退した各社との違いは何か。それはセブン-イレブンが「加盟店を含めた自社グループ店舗でのピッキング」であるということになろう。ざっくり言えば、撤退した事業者は元々リアル店舗を持っていた小売業ではなく、ダークストア方式(ピッキング専用の倉庫として使用する店舗を配送拠点として整備する)を採用していた。
ダークストアは、コロナ禍の際にリアル店舗での販売活動が困難となり、街の中に多数の閉鎖店舗が発生したため、空き店舗をデリバリーの発送拠点として活用したという経緯から生まれたものらしい。
コロナ禍でロックダウン(都市封鎖)していた欧米の都市部でデリバリーニーズが高まったこと、リアル店舗が利用価値を失い、賃料が低下したことなどを背景として成立したとのことだが、日本にもそのままのスタイルで輸入されたのである。
しかし、コロナ禍初期でもロックダウンしなかった日本では、食品購入の制約はそこまで大きくなく、また、人口密集度が高く食品を販売する店舗が過密に存在しているため、ダークストアの損益分岐点に達するほどのニーズが確保できなかったのであろう。そして、ダークストアタイプのクイックコマースはコロナ終息前でもビジネスが成立せず、大半が撤退していった。
クイックコマースベンチャーながら、現在も事業を拡大しつつあるONIGO(東京都)にしても、そのビジネスモデルを変更している。
ダークストア方式の直営店からスタートし、配送員も自社で抱えるスタイルであったONIGOは、事業拡大に当たって既存の食品スーパーやコンビニエンスストアとの提携に転換し、「ローソン100」「ヨーク」「いなげや」「ビッグ・エー」「アオキスーパー」など小売業の店舗を配送拠点とするモデルとなっている。また、ウーバーイーツ、ウォルト(Wolt)とも提携、フードデリバリーサイトにも出店するようになった。
こうした経緯を見ていくと、クイックコマースのニーズは現時点では、配送拠点、配送員のコストを十分に賄えるほどには成熟していないとみるべきなのであろう。逆に言えば、人口密集地に高密度な店舗網を持っている企業こそ、クイックコマースのインフラを備えているとも言える(店舗数が多いほど配送エリアを細分化できるため、配送時間が短くなる)。だから、セブン-イレブンは7NOWの全国展開に手応えを感じたのであろう。
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