AEON PayにヤオコーPay、メルコイン……決済の新たな動きを専門家が解説!

崔 順踊(リテールライター)
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小売企業が提供する決済サービス

 2021年9月からイオン(千葉県)で導入されている「AEON Pay(イオンペイ)」や、2023年3月より提供されている「ヤオコーPay」など、小売業が提供している決済サービスが「カード」から「モバイル」に切り替わっている点にも注目だ。

 クレジットカードには、「国際ブランドカード」と「ハウスカード」とがあり、モバイル決済もPayPayのような汎用的なモバイル決済と「ハウスモバイル決済」が存在する。イオンペイやヤオコーPayなどは、このハウスモバイル決済にあたるサービスだ。

 小売業がハウスモバイルを提供するメリットは、加盟店手数料を低く抑えることができるという点だ。国際ブランドを介さないことでコストダウンができ、各種サービスやその告知によって顧客の利便性を向上させられると共に、スマホによって顧客接点や顧客との接触機会を簡単につくることができる。

 海外でもプラスチックのカードに代わり、アプリのようなストアモバイルが普及しており、その流れが小売にもハウスモバイル決済というかたちで現れている

 小売が提供するハウスモバイル決済がPayPayなどのモバイル決済と競合する点について、佐藤氏は「アプリのUI/UXが良ければ、消費者はそれぞれのサービスを使い分けるだろう。TPOに応じて、使い分ける人達をマーケティングによって自社顧客にできるかがポイントになる。そのためにも、加盟店手数料を下げることに注力するだけではなく、消費者目線でどのような利便性が提供できるのかを踏み込んでアプリをつくり込むことが大切だ」と述べている。

「ペイ」から「ウォレット」へ 

 加えて、「今後は決済だけではなく、『ウォレット』という概念が非常に重要になる」と佐藤氏は話す。「決済ができること」は今や当たり前になっており、世界は「ペイ」から「ウォレット」の競争になっているというのだ。

 実際に、グーグル(Google)の「Google Pay(グーグルペイ)」アプリが「Google Wallet(グーグルウォレット)」に切り替わり、サムスン(Samsung)の「Samsung Pay(サムスンペイ)」が「SamsungWallet(サムスンウォレット)」の一部になったように、大手テック企業は自社の決済関連サービスのブランドや名称を「ペイ」から「ウォレット」に変更している。具体的には、上位概念としての「ウォレット」があり、その下位概念の1つに「決済(ペイ)」があるイメージだ。

 ここで重要になるのは、“自前主義”だけではウォレットとしての魅力が出せないという点だ。そのために、各事業者は先述のようにさまざまな異業種とアライアンスを組み、自社のウォレットでいかに魅力的なサービスを提供するかを検討しているのである。
 
 暗号資産関連の規制強化が進んでいるタイミングではあるものの、フリマアプリのメルカリ(東京都)が「メルコイン」をスタートし、従来の「メルペイ」による決済に加えて、暗号資産の取引サービスを始めている。これも、既存のサービス体系に「投資」という要素をプラスし、アプリの利用頻度向上をめざした「ウォレット」構想の一環ととらえることもできる。

 「これらキャッシュレスサービスの拡大と浸透を促すためにも、セキュリティ対策、踏み込んだマーケティングを行いつつ、顧客とのエンゲージメントをいかに高めていくかが重要になるだろう」(佐藤氏)。

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