服を売らないリアル店舗「似合うラボ」を、ZOZOが経営戦略の軸に置く重大な理由
ファッションECサイト「ZOZOTOWN」を運営するZOZO(千葉県/澤田宏太郎社長)は、2022年12月に同社初となるリアル店舗「niaulab by ZOZO」(以下、似合うラボ)を東京・表参道にオープンした。商品の販売は行わずスタイリング提案を行う同店のねらいとZOZOの事業戦略について、同社の事業責任者に取材した。
「服を売らないリアル店舗」はなぜ生まれた?
ZOZOが出店する似合うラボは、服を売らずに、無料でパーソナルスタイリングサービスを提供する完全予約制の店舗だ。AIとプロのスタイリストによるスタイリング提案を行う。一般的には2~3万円かかるパーソナルスタイリングサービスを無料で提供するのは、前例のない思い切った試みだ。
似合うラボの体験方法を簡単に説明しよう。体験予約は抽選制となる。LINEの専用アカウントから応募し、当選したらファッションの好みや悩みについてカウンセリングシートに回答する。体験当日は、カウンセリングシートの内容をもとにZOZO独自のAIが3パターンのコーディネートを提案。それを活用してプロのスタイリストがお客と対話しながら自分に最も似合うスタイリングを決めていくという流れだ。
似合うラボにはプロのヘアメイクアーティストも常在していて、お客は自分に似合うヘアメイクを受けることもできる。店舗内はZOZOTOWNで取り扱う700点以上のアイテムが並べられ、貸切状態で2時間以上の体験が可能だ。退店時にはスタイリングのポイントが書かれたカードがもらえるほか、後からLINEで撮影した写真と試着したすべてのアイテムの商品情報がZOZOTOWNの商品ページのURLとともに送付される。
ZOZOは似合うラボを「超パーソナルスタイリングサービス」を提供する体験型の店舗と位置付けており、コンセプトは「『似合う』で、人は笑顔になる」としている。ZOZOの事業やサービスを中心にクリエイティブディレクターを務め、似合うラボの事業責任者である大久保真登氏は、その真意について「似合うラボの目的は、『似合う』を解明すること」だと説明する。
続けて「商品を売ることよりも、お客さまの『似合う』を見つけてファッションを楽しんでもらうことを優先した」と説明。商品を売るのはお客が「似合う」を見つけたあとでいいという。
「たとえばトップスの下に何を着たらいいかわからない方に対して、ZOZOはブランドを横断して商品を提案できる強みがある。ZOZO独自のAIとプロのスタイリストの知見を掛け合わせたスタイリングにくわえ、ヘアメイクも含めた総合的な提案なので、『超パーソナルスタイリングサービス』という呼び方をしている」(大久保氏)
似合うラボで自分の『似合う』を見つけたお客は、新しい自分の姿に驚いたり、自信を持てたりする方が多いという。大久保氏は「あっという間の2時間だったと笑顔を浮かべるお客さまがほとんど。利用後のアンケートでは、購入意欲が湧いたという回答結果が目立った」と述べる。