説明下手な人の方がなぜか売れる?ライブコマースに必要な「不完全さ」とは

望月 智之 (株式会社いつも 取締役副社長)
Pocket

前回の記事で、ライブコマースにはメーカー・小売業・個人の3つの区分でそれぞれ使い方や特徴が異なることをご紹介しました。今回の記事では、それぞれのプレイヤーに共通して現在のライブコマースに不可欠な『不完全さ』についてご紹介します。

whitebalance.oatt/istock
whitebalance.oatt/istock

Eコマースとライブコマースの違い

 不完全と聞くと不思議に感じられるかもしれませんが『完璧すぎるコンテンツより不完全が良い』という状況が、現在のライブコマース市場の傾向として表れています。その理由をご説明するためにも、まずはライブコマースとEコマースの違いについておさらいしておきましょう。

 そもそもライブコマースは、エンタメと物販が組み合わさったコンテンツで、従来のEコマースとは少し特性が異なります。従来、お買い物をするためには店舗に行く時間が発生するのが当たり前でしたが、Eコマースが登場してボタン1つで買い物が完了し、指定した場所に商品が届くようになりました。欲しい商品を探す際にも検索することですぐに見つかり、レビューを見ることでその商品の人気までわかるという新しい買い物の便利さと手軽さで急速に普及しました。

 一方でライブコマースは、配信を見るための時間を使うためEコマースに比べて一見不便な買い物のように見えます。しかし、そもそも買い物には『早い買い物』と『遅い買い物』があります。この違いをしっかりと把握していないと、ライブコマースに不向きな商品やコンテンツ作りをしてしまい、視聴者が離れてしまう結果になりかねないのです。

 例えば、普段使いしている日用品など欲しいものが決まっている目的性の高い商品であれば、Eコマースを活用することで、素早く商品が届くという『早さの価値』が強く働きます。品揃えも多く、アパレルやコスメなど商品自体にエンタメ性がある買い物に特に向いていると言えるでしょう。

 逆に、ライブコマースでは商品作りにこだわりが強いものや、しっかり情報を伝えないとわかりづらい商品など、本来じっくり説明するべき商品に向いています。

 特に食品との相性も良く、普段食べていない特別な食材や、あまり食べる機会がないけど興味がある食品、料理の仕方が特殊なものなどもライブコマースに向いています。

 このような、『しっかりと説明が必要な商品』とライブコマースの相性が非常に良いというポイントが重要です。

 さらに、前回の記事でもご紹介したように、Eコマースにおいてもテキストが動画化される傾向にあります。ユーザーも、これまでテキストで読み込む必要があった情報を、動画で収集するようになっており、『説明が必要な商品との相性』と『動画需要の高まり』から、これまでEコマースで課題となっていた商材に光を当てるコンテンツこそがライブコマースと言えるのです。

1 2

記事執筆者

望月 智之 / 株式会社いつも 取締役副社長
1977年生まれ。株式会社いつも 取締役副社長。東証1部の経営コンサルティング会社を経て、株式会社いつもを共同創業。同社はD2C・ECコンサルティング会社として、数多くのメーカー企業にデジタルマーケティング支援を提供している。自らはデジタル先進国である米国・中国を定期的に訪れ、最前線の情報を収集。デジタル消費トレンドの専門家として、消費財・ファッション・食品・化粧品のライフスタイル領域を中心に、デジタルシフトやEコマース戦略などのコンサルティングを手掛ける。ニッポン放送でナビゲーターをつとめる「望月智之 イノベーターズ・クロス」他、「J-WAVE」「東洋経済オンライン」等メディアへの出演・寄稿やセミナー登壇など多数。
© 2024 by Diamond Retail Media

興味のあるジャンルや業態を選択いただければ
DCSオンライントップページにおすすめの記事が表示されます。

ジャンル
業態