米GDP確報値、第3四半期は33.4%増 改定値から小幅上方修正
[ワシントン 22日 ロイター] – 米商務省が22日発表した第3・四半期の実質国内総生産(GDP)確報値(季節調整済み)は年率換算で前期比33.4%増と、政府が統計を始めた1947年以降で最大の伸びとなった。改定値の33.1%増から小幅に上方改定された。
政府による3兆ドルを超える新型コロナウイルス支援策が押し上げ要因となった。ただ、新型コロナ感染が急増し景気刺激策の資金がなくなる中、年末にかけて経済活動の勢いが鈍化しているもようだ。市場予想は改定なしの33.1%増だった。
第2・四半期GDPは年率で前期比31.4%減と、統計開始後で最も大幅な落ち込みだった。
2月に景気後退(リセッション)入りした米経済はその後持ち直したが、依然として2019年末時点の水準を3.5%下回っている。米国は新型コロナ感染の再拡大に直面しており、ロイターの集計によると、感染件数は1778万人、死者は31万7800人を超えた。
州や地方政府が事業規制を再び導入したことで、個人消費が抑えられたほか、改めて解雇の波が押し寄せた。米議会が苦戦する企業や失業者への追加支援策でなかなか合意できなかったことも事態を悪化させた。
MUFGのチーフエコノミスト、クリス・ラプキー氏は「第3・四半期GDPが数十分の一上方改定されたところで、冬の新型コロナ関連の事業閉鎖や制限措置が与えるとみられる景気への大打撃を埋め合わせるにはほど遠い」と指摘。その上で、「唯一の朗報は、企業利益が当初予想よりも早く回復していることだ。利益が増えているということは企業がそれほど人員を削減しなくてよいということだ」と付け加えた。
自動車部門を中心に21部門がGDPを押し上げる方向に働いた。鉱業部門が唯一落ち込んだ。原油安によりガスや石油の立坑・油井を含む住宅以外のインフラ投資が低迷したためとみられる。
議会は21日、9000億ドル近くの支援策を可決した。大半の国民が直接給付を受けるほか失業保険手当が上乗せされる。中小企業に返済免除可能な融資資金を提供する給与保証プログラム(PPP)の拡大や、教育、航空会社、交通機関、新型コロナワクチン配布に向ける資金も含まれる。追加支援は幾分景気への打撃を和らげるものの、エコノミストは支援が不十分で、導入が遅すぎると述べる。パンデミック(世界的大流行)によって予算が逼迫している州や地方政府への支援が含まれていないとも指摘する。
JPモルガン・ファンズ(ニューヨーク)のチーフグローバルストラテジスト、デービッド・ケリー氏は「この支援策は短期的な効果にとどまり、新たな議会で追加支援策が必要になる。パンデミックが落ち着くまで失業者や小企業を支えるには十分でないことは明らかだ」とした上で、「州や地方政府に対する追加支援がないことで、こうした部門内で向こう数カ月間、解雇が増える可能性が高まる」と述べた。
米S&P総合500種指数採用企業の利益に相当する在庫評価・資本減耗調整を除く税引き後利益は前期比36.1%増だった。改定値の36.6%増から小幅に下方改定された。所得面から経済活動を把握する国内総所得(GDI)は前期比25.8%増。改定値は25.5%増だった。GDIは第2・四半期に32.6%減と、過去最大の落ち込みだった。
経済成長を見る上でより優れた手法とされるGDPとGDIの平均は29.6%増だった。改定値の29.2%増から小幅に上方改定された。第2・四半期は32.0%減だった。
ワクチン接種は始まっているものの、専門家は集団免疫が実現するまでには時間がかかると警告する。
米経済の3分の2以上を占める個人消費は第3・四半期に41.0%増加し、広範にわたる全体のGDPの増加をけん引した。改定値は40.6%増だった。ただ消費はそれ以降、鈍化しているもようだ。小売売上高は10月と11月に減少。政府による失業保険上乗せ給付が失効するにつれ所得が抑制されたためだ。
失業保険申請件数は3カ月ぶりの高水準にある。労働市場の圧迫や所得の減少を背景に第4・四半期GDP予想は年率で約5%増となっている。大半のエコノミストは21年第1・四半期GDPが小幅な増加にとどまるか縮小するとみる。
設備投資は第3・四半期に22.9%増と、改定値の21.8%増から上方修正された。機器の投資が好調だった。ただ、住宅以外のインフラ投資は4四半期連続でマイナスだった。