「MDの進化が停滞している……」ヤオコー川野澄人社長が吐露した危機感の正体

雪元 史章 (ダイヤモンド・チェーンストア 副編集長)
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ヤオコー(埼玉県)の川野澄人社長は12月17日、年末恒例のメディア向け記者会見に登壇。今期のここまでの業績と取り組みを振り返るとともに、来期以降の方向性について説明した。19年度上期の業績は単体ベースで営業減益となるなど、やや苦戦模様のヤオコー。人手不足の深刻化や少子高齢化といった外部要因に加えて、川野社長は「商品政策(MD)の進化が停滞している」と指摘。ヤオコーが経営テーマの1つとして掲げる「チェーンストアとしての個店経営」の確立に向け、本腰を入れる構えを見せた。

生鮮の販売に苦戦

ヤオコー川野社長
ヤオコーの川野澄人社長

 「非常に苦戦した」――会見の冒頭で川野社長は今期ここまでを厳しい言葉で振り返った。19年度第上期は連結ベースでは子会社のエイヴイ(神奈川県)が好調だったこともあり増収増益となったが、ヤオコー単体では営業減益を計上。さらに既存店客数も前年同期を下回るなど苦戦が続いている。

 川野社長がとくに大きな課題として認識しているのが客数で、「(業績低迷の)大きな要因は客数減少の動きにストップをかけられていないこと。その傾向は下期に入っても大きく変わっていない」と危機感をあらわにした。

 さらに川野社長は、集客のカギを握るMDの領域について、「ここ数年はMDの進化が停滞していたという反省がある」と言及。「総菜については需要の高まりに対応しながらMDを進化させられているが、生鮮についてはただでさえ素材から料理をする人が減っているなかで、お客さまに手にとってもらえるような売り方ができていない」と川野社長は指摘した。

「チェーンストアとしての個店経営」の難しさに直面

ヤオコー
「チェーンストアとしての個店経営」の確立を急ぐ

 全国の食品小売企業がこぞってベンチマークしてきたヤオコーのMDが、なぜ停滞しているのか。背景について川野社長は、「人手不足の中でオペレーションの改善に力を割いてきたことが大きい。新しいMDを入れる際には、”(オペレーション面で)減らすところを減らしてから”という進め方になっていた」と説明する。

 ヤオコーはかねてより経営テーマの1つとして、「チェーンストアとしての個店経営」を掲げてきた。チェーンストアならではの効率的な運営体制や教育体制を敷きつつ、地域特性や販売動向を見ながら店ごとにMDを自ら考え実行するという体制の確立をヤオコーはめざしてきた。しかし、人手不足が深刻化するなかで、どうしても効率性を追求する「チェーンストア的」な取り組みが先行し、MDを含めた「個店経営」に係る取り組みが若干手薄になっていた。

 こうした状況を踏まえ、「来期は本来の強みである”個店の良さ”をより強めていきたい」と川野社長は意気込みを語る。
具体的な施策については今後詰めていくが、「店が仮説を持って思い切って単品を売り込んだり、新しい商品を提案したりといった取り組みを回せるようにしていきたい」(川野社長)。そのうえで、新しい売場づくりに店全体でチャレンジする新たな旗艦店を来期中に出店する計画も明らかにした。

 その一方で、チェーンストアとしての取り組みにも引き続き力を入れる。デリカ生鮮センター(埼玉県東松山市)の活用領域の拡大や、自動発注を含む発注精度の向上を推進する考え。さらに川越市内のサポートセンター(本部)での業務を2割削減することをめざし、業務プロセスの改善や組織体制の刷新も行う。本部業務を削減したぶん、一部のリソースを店舗業務に充当することも検討する。 

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記事執筆者

雪元 史章 / ダイヤモンド・チェーンストア 副編集長

上智大学外国語学部(スペイン語専攻)卒業後、運輸・交通系の出版社を経て2015年ダイヤモンド・フリードマン社(現 ダイヤモンド・リテイルメディア)入社。

企業特集(直近では大創産業、クスリのアオキ、トライアルカンパニー、万代など)、エリア調査・ストアコンパリゾン、ドラッグストアの食品戦略、海外小売市場などを主に担当。趣味は無計画な旅行、サウナ、キャンプ。好きな食べ物はケバブとスペイン料理。全都道府県を2回以上訪問(宿泊)済み。

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