第1回 成長戦略にもなりうるSDGsの本質とは?
最近、よく耳にするようになった言葉に「SDGs(エスディージーズ)」がある。Sustainable Development Goalsの略で、日本語では「持続可能な開発目標」と訳される。今、SDGsを成長戦略の機会ととらえ、企業活動に取り込む動きが広がり始めている。小売業においてはどうなのか。その最前線を全4回にわたってレポートする。
SDGsとは「国際社会共通の目標」
そもそもSDGsとは、2015年9月の国連サミットで全会一致で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ(以下、2030アジェンダ)」に記載された、30年までの国際開発目標のことである。
もともと国連では貧困や飢餓の撲滅など8つの目標を掲げた「ミレニアム開発目標(MDGs)」を01年に策定。達成期限となる15年までに一定の成果を上げていたものの、教育や衛生など未達成の目標が残された。
また、深刻さを増す環境汚染や気候変動への対策など新たな課題が生じるなど、MDGsの策定時から開発をめぐる国際的な環境は大きく変わってきた。
そこでこうした状況に取り組むべく、「2030アジェンダ」がMDGsの後継として採択され、持続可能な世界の実現に向け、相互に関連した17の目標と169項目のターゲット(具体目標)から成る「持続可能な開発目標」を掲げた(図表)。これがSDGsである。
MDGsとSDGsの大きな違いは、MDGsが先進国による開発途上国の支援を中心とする内容だったのに対し、SDGsは格差の問題、持続可能な消費や生産、気候変動対策など、先進国も取り組まなければならない課題を含んでいることだ。しかも、その達成のために、すべての国や企業、市民が連携して取り組むことを求めている。
SDGsの達成に向けて官民挙げて取り組みが進む
日本でもSDGsの達成に向けて官民挙げての取り組みが進んでいる。まず政府は、16年5月に持続可能な開発目標(SDGs)推進本部を立ち上げた。これは内閣総理大臣を本部長として、全閣僚を構成員とするもので、国としての取り組みを推進する司令塔の役割を担う。
一方、民間では日本経済団体連合会(経団連)が17年11月にSDGsの達成を柱として企業行動憲章を改定。持続可能な社会の実現を牽引する役割を担うことを明示した。
さらに近年では、環境(Environment)・社会(Society)・企業統治(Governance)に配慮している企業を重視・選別して投資を行うESG投資が世界的に拡大しており、企業もSDGsを無視できない状況になっている。こうした今、SDGsを単なる社会貢献活動ではなく、成長戦略の機会ととらえ、新たな企業価値の創造が期待されている。
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