食品スーパーの22年度が“トリプルデメリット”でもヤオコー、ベルクが強かった理由
食品スーパー(SM)の2022年度決算は、巣ごもり特需の反動減、電気料金をはじめとした経費増などを理由に、減益に沈んだ企業が相次いだ。その一方で、コスト増の影響をはねのけ、最高益を叩き出した企業もあり、企業間格差が鮮明になった1年でもあった。SMの波乱の22年度決算を本誌おなじみのアナリスト、いちよし経済研究所の柳平孝氏に総括してもらった。
厳しさ増す事業環境広がる企業間格差
2022年度のSM業界は、コロナ禍での内食需要拡大からの「反動減」、仕入れ原価の上昇による「粗利益率の低下」、電気料金の高騰に伴う「販管費の増加」という“トリプルデメリット”に見舞われた1年であった。
コロナ禍での行動制限が緩和された22年3月以降、食費が外食に流出し、22年春から秋にかけて既存店売上高が伸び悩んだ。また、仕入れ原価が上昇する中、原価の増加分を価格へ転嫁することに躊躇がみられ、粗利益率の低下を招いた。さらに、原油価格の高騰が円安で増幅され、22年度第2四半期以降、電気料金が30~40%上昇し、冷蔵・冷凍設備の使用が不可欠な業種・業態に影響を及ぼした。中でもSMは最も影響を受けた業態だ。
このように厳しい事業環境のもと、2022年度決算は企業間の業績格差が極端に表れた。“トリプルデメリット”が大半のSMを直撃する一方で、ハローズ(広島県)、ベルク(埼玉県)、ヤオコー(埼玉県)は過去最高益を更新した。これら“強いSM”に共通するのは店舗網の若さだ。オーガニックな出店を継続してきたSMほど、若い店舗網が健全なキャッシュフローを生み出している。
そのほかの大手SMの動向をみていくと、ライフコーポレーション(大阪府)の22年度は、出店拡大にアクセルを踏んだ初年度にあたる1年だった。先行投資の負担が重かったことに加えて、電気料金高騰の影響も受けたため、既存店売上高は堅調に推移したものの減益となった。アークス(北海道)は既存店売上高、粗利益率ともに堅調で減益の要因となったのは電気料金の高騰だけであり、相対的に「持ちこたえた」と評価できる。
SMも無関係ではない!「PBR1倍割れ」問題
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