クリティカルマスが1兆円になったドラッグストア業界で、食品強化型が再編を焦らない理由
国内ドラッグストア産業史上初めて、1兆円規模の企業が誕生することとなった。再編ドミノが次々と起こるドラッグストア業界だが、一方でM&A(合併・買収)による規模拡大を否定する有力チェーンも少なくない。また、同じドラッグストアといっても全く異なるコンセプトで展開する企業群に分かれており、それぞれが真っ向から競争するとは言えない状況となっている。それらを踏まえ、今後ドラッグストア業界はどのように再編していくのか、何が勝ち残りのキーポイントとなるのかを考察していきたい。(※ホールディングスはHDと表記)
生き残るための最低条件、クリティカルマスは一気に1兆円に!?
7兆2700億円市場(2018年度)のドラッグストア業界。ここ数年、年間5~6%ずつ市場が成長しながら、猛烈な勢いで再編が続いている。14年度まではマツモトキヨシHDが首位だったが、15年にイオングループのドラッグストア4社を結集させたウエルシアHDが首位の座を奪還。17年度は17年9月に杏林堂HD(静岡県)を子会社化したツルハHD(北海道)が業界トップに躍り出たが、翌18年度は一転、一本堂(東京都)を傘下に収めたウエルシアHDが首位に返り咲いた。19年度は業界7位ココカラファインが再編のキャスティングボードを掌握。スギHDとマツモトキヨシHDを両天秤にかけ、後者を相手に選んだことで、マツキヨ・ココカラ連合が首位に着くことになる。
マツキヨ・ココカラ連合誕生が意味することとして、特筆すべきは、生き残りをかけたクリティカルマス(最低限の規模)が一気に1兆円へと跳ね上がったことが挙げられよう。このクリティカルマス、10年前は約2000億円、5年前は4000億円ほどだったので、求められる規模のハードルが、短期間のうちに段階的に大きく引き上げられていることがわかる。
次のページは
ドラッグストア業界で再編が起こり続ける2つの本質的な異業態との違い