地域脱炭素社会のリーダーは流通小売業、店舗が「地域グリーンインフラの中心拠点」に

構成:石山 真紀(フリーライター・売場研究家)
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アイ・グリッド・ソリューションズ(以下、IGRID)では流通小売店舗に自家消費型太陽光発電所を導入しクリーンな電力を供給する太陽光PPA事業をコアにビジネスを加速させている。IGRIDで執行役員を務める加田木太朗氏に地域カーボンニュートラル推進のリーダーとして流通小売業が活躍する将来像について話をきいた。

全国約400の流通小売店舗に自家消費太陽光発電を導入

― はじめにIGRIDの沿革についてお聞かせください。

㈱アイ・グリッドソリューションズ執行役員 ㈱VPP Japan取締役COO 加田木 太朗
㈱アイ・グリッドソリューションズ執行役員
㈱VPP Japan取締役COO
加田木 太朗

加田木 当社はエネルギーに関わるコスト・CO2排出削減ソリューションの提供を目的に2004年に創業しました。店舗のエネルギーマネジメント、太陽光発電、電力小売と事業の幅を拡げ、現在は「グリーンエネルギーがめぐる世界の実現」を目指し、グループ会社のVPP Japan、アイ・グリッド・ラボを合わせた3社でビジネスを展開しています。

― グリーンエネルギーについては年々注目度が高まっていますが、具体的な事業内容についてお聞かせください。

加田木 当社は流通小売業に特化したエネルギーを「減らす・創る・繋ぐ・活かす」ことによるワンストップの脱炭素ソリューション事業を展開しています。

 まず「創る」では自然を傷つけない屋根上太陽光発電の導入を行い、「繋ぐ」では施設で生まれた太陽光電力の余剰分を他施設/家庭に電力融通を、「減らす」ではエネルギーマネジメント活動支援を、そして「活かす」ではAIやクラウド技術を用いて、蓄電池やEV充電ステーション等と太陽光発電を組み合わせた新たなソリューションを提供しています。

― 御社のPPA(Power Purchase Agreement:第三者モデル)事業は流通業でも多数の導入実績があります。

加田木 ありがとうございます。当社では創業から一貫して流通小売業の店舗環境、経営環境に特化したソリューション開発、提供を行っています。その中でも太陽光PPA事業ではグループ会社であるVPP Japanが設備投資を行い、店舗屋根に自家消費型太陽光発電所の導入を進めています。流通小売業は大量の電力を消費するため、電力に関わるCO2排出が年々大きな経営課題となっており、これらの課題を解決するサービスとして、現在では全国37都道府県約400の流通小売店舗に導入いただき、国内最大規模の事業に成長しました。

経営戦略に「GX」という考え方を取り入れ
地域・お客さまとのエンゲージメントを高める

― 日本は2050年までにカーボンニュートラルを達成するという目標を掲げています。この実現に向け、課題と感じていることはありますか?

加田木 2050年カーボンニュートラルの実現は社会全体の必達目標となっており、GX(グリーントランスフォーメーション)が避けることの出来ない経営アジェンダとなっています。ここでいう「GX」とは、エネルギーを化石燃料からグリーンエネルギーに転換することを社会経済の成長機会と捉え、企業成長につなげることを指します。

 「GX」というと気候変動リスクへの対策や投資家等への情報開示など様々なものが挙げられますが、真のGXを目指すには、「攻めのGX」が必要であると我々は考えています。

― 「攻めのGX」とは、具体的にどんな事柄を指しますか?

加田木 当社が考える流通小売業の「攻めのGX」は、カーボンニュートラルをはじめとした環境対応をリスクやコストとして捉えるのではなく、世の中に先駆けて取り組む事によって、企業価値向上や地域・お客さまとのエンゲージメント強化、今後環境問題への意識の高いZ世代の優秀な人材が集まる企業となるための経営戦略として捉えることを指します。流通小売業は、サプライヤーから物流、消費者、自治体に至るまで、地域社会に多くのタッチポイントを持っているため、地域カーボンニュートラルを先導する大きな推進力があると我々は考えており、「攻めのGX」を経営戦略に取り入れる事を提案しています。

― 流通小売業起点のGX推進ということですが具体的にどんな取り組みが挙げられますか。

加田木 事例としてWal-Martなど海外小売業はGXに向けた取り組みを強化しており、日本でもこの動きは加速するとみられています。当社は「攻めのGX」を実現するための計画策定からソリューションによる具体的なCO2削減対策の実施のほか、環境に優しく、災害に強い次世代店舗「GX Store」への転換を推進しています。

環境に優しく、災害に強い
地域グリーンインフラの中心拠点「GX Store」

― 次世代店舗「GX Store」について、詳細をお聞かせください。

GX Store

加田木 地域カーボンニュートラルの推進にあたっては、分散する施設への太陽光発電普及が重要になる一方で、気象により変動する発電量を地域全体でバランスさせる事が同時に必要です。「GX Store」には太陽光発電を導入するとともに、「大型蓄電池」と「空調等の設備制御」等を導入し、発電量と使用量をコントロールする事で、自店舗の太陽光電力利用を最大化します。さらに今後地域の各施設で太陽光発電が普及するに従い発生する利用しきれない電力を、送配電網を通じて自店舗の電力として受け入れる(=めぐらせる)事で、「GX Store」が他施設の太陽光電力利用も最大化する等、地域の再エネ自給率を向上させる役割を果たす事を目指します。流通小売店舗は太陽光発電を導入できる屋根、駐車場と広大な遊休スペースを持っており、地域に分散して多店舗展開をしているからこそこういった取り組みが実現できると考えています。

 さらにEVで来店されるお客さまへのクリーンな充電サービス提供や、災害停電時には太陽光と蓄電池による電力供給で早期の営業再開を行う等、「GX Store」が持続可能な地域の生活を支えるグリーンインフラの中心拠点になると考えており、実例として昨年からヤオコー様と共同で「GX Store」構築に向けた実証を推進してきました。IGRIDが独自開発したAIを用いた電力プラットフォームで各ソリューションを管理・コントロールする事により実現することができます。

ヤオコー鶴ヶ島店と川越的場店のGXストアの実証実験
ヤオコー鶴ヶ島店、川越的場店では21年6月からGXストアの実証が開始、太陽光PPA・蓄電池・EVチャージャー・EV車両がIGRIDのプラットフォームで統合制御されている。

― 最後に、小売業に向けてメッセージをお聞かせください。

加田木 地域カーボンニュートラルの実現に向けて、店舗を通じて地域と多くのタッチポイントを持つ流通小売業のリーダーシップがいま期待されています。サプライヤーや物流などの取引先施設への太陽光導入支援、施設で発電された太陽光電力をお客さまの家庭へ提供、自社のGX活動をお客さまや地域の子供たちに発信するコミュニケーション活動など、流通小売業だからこそ先導できる地域カーボンニュートラルの推進活動を一緒に考え、併走したいと考えています。流通小売店舗が中心となって再生可能エネルギーを地域にめぐらせる循環型のカーボンニュートラルを推進していきたいです。

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