20代の“モンスター社員”を生んでいるのは、家でも学校でもなく、実は会社だ!
育成と丸投げ、寛大さと甘やかしをはき違えるな!
寛大なまなざしで若手を見ることは、時には必要だろう。それが度を超えると、今回のような問題が生じる。私は、次のような教訓を導いた。
こうすればよかった①
育成の態勢を早急に整える
致命的な問題は、社員を育てる態勢や仕組み、風土、文化がほとんどないことだ。その象徴が、役員が課長、部長を兼務していることだろう。社員数や定着率が低い状況を考慮すると、ある面では止むを得ないのかもしれない。しかし、20代後半が事実上の管理職をするのは、いかんせん無理がある。しかも、給与計算という何かとトラブルが起きやすい仕事を丸投げしている。揚げ句に、外注先の自営業者への指示までさせていた。ここまでくると、役員は極めて無責任と言えないだろうか。
注意すべきは、このような20代の社員が現れると、「今の若者は何を考えているか、わからない」などと扱う世論や空気である。実は、この“モンスター”を生んでいるのは、人を育成しようともしない社長、役員や管理職なのだ。「長い目で見る」ことの意味を心得ていない役員ならば、期待はもてないかもしれないが、育成の態勢や仕組みを少しずつ作るようにしたいものだ。
こうすればよかった②
度をこえた「寛大さ」を捨てるべき
この事例は、役員が育成の意味を心得ておらず、野放しにした結果、トラブルが起きているとも言える。度をこえた「寛大さ」が部下の成長の可能性を閉じてしまうのだ。そして、外注先の自営業者の自尊心や心を潰していく。この悪循環を理解しないといけない。
特に30代半ばくらいまでの部下には、状況いかんで言うべきことを言い、叱るところでは叱るのが育成なのだ。育てるのは、時間とエネルギー、お金などがどうしても必要になる。漫然と仕事をさせて、そのままほかっておけば成長すると信じ込んでいるならば、もはや話し合いはできない。私は、役員に「あなたは部下を育てる考えがあるのか否か」を聞いてみたい。
神南文弥 (じんなん ぶんや)
1970年、神奈川県川崎市生まれ。都内の信用金庫で20年近く勤務。支店の副支店長や本部の課長などを歴任。会社員としての将来に見切りをつけ、退職後、都内の税理士事務所に職員として勤務。現在、税理士になるべく猛勉強中。信用金庫在籍中に知り得た様々な会社の人事・労務の問題点を整理し、書籍などにすることを希望している。
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