第10回 すぐ激高するベテラン課長が、本音と建前が錯綜する職場を生み出す
本音を言い合える風土を作るのは上司の仕事
ベテランの管理職でありながら、感情的な言動が多いために、部下を委縮させてしまう。私は、次のような教訓を導いた。
こうすればよかった①
「部下の目」を強く意識する
浜田が部下たちの視線を感じながら、仕事をしているのかと言えば、意見のわかれるところだろう。通常は一般職であっても、周囲から自分が見られていると意識するべきだ。それが、組織人として仕事をするうえで特に大切ではないか。管理職ならば、なおさらだろう。常に部下たちの模範にならなければいけないはずだ。
上司が怒りや不満などの感情をむき出しにすると、部下は意気消沈する。本来、管理職は自分を押し殺し、部下を育成し、部署をチームとしてまとめ上げ、業績を上げていくことが使命である。
さらに言えば、ビジネスはディベートではない。議論で打ち負かすものではない。勝つか、負けるか、ではなく、まずは業績を上げることだ。誰もが心得ておくべきでありながら、実は多くの人が見失っていることではないだろうか。
こうすればよかった②
自分の感情は自らコントロール
感情をむき出しにすると、いかにそばにいる人を不愉快にさせるか。成熟した大人ならば、自分の感情は自らコントロールをするべきだろう。上司が怒りなどをむき出しにすると、部下はご機嫌をとったり、気を払ったりするかもしれない。だが、これはマネジメントとは程遠い。
上司は部下の心を掌握できないといけない。「掌握」とは、部下から称賛、尊敬されることである。脅したり、威圧して嫌々認めさせようとするものではない。
ベテランである浜田にはそこまで心得ておいてほしい。
こうすればよかった③
本音を言い合える空間や風土を整える
管理職が感情をむき出しにすると、本人は気分がいいかもしれない。しかし、それによって自分が何を失うのかを冷静に、広い視野で考えたい。部下たちは浜田の顔色をうかがい、本音をなかなか言わ(え)ない。この場合の「本音」とは各自が言いたい放題になることではない。よりよいものをつくるために、前向きで、建設的という原則を守りつつ、相手に配慮したうえで踏み込んだ意見を言うことである。可能な限り、本音を言い合える空間や風土を整えることが必要になる。浜田の責任は重い。
神南文弥 (じんなん ぶんや)
1970年、神奈川県川崎市生まれ。都内の信用金庫で20年近く勤務。支店の副支店長や本部の課長などを歴任。会社員としての将来に見切りをつけ、退職後、都内の税理士事務所に職員として勤務。現在、税理士になるべく猛勉強中。信用金庫在籍中に知り得た様々な会社の人事・労務の問題点を整理し、書籍などにすることを希望している。
当連載の過去記事はこちら