第10回 すぐ激高するベテラン課長が、本音と建前が錯綜する職場を生み出す

2019/07/05 05:33
神南文弥(じんなん ぶんや)

このシリーズは、部下を育成していると信じ込みながら、結局、潰してしまう上司を具体的な事例をもとに紹介する。いずれも私が信用金庫に勤務していた頃や退職後に籍を置く税理士事務所で見聞きした事例だ。特定できないように一部を加工したことは、あらかじめ断っておきたい。事例の後に、「こうすれば解決できた」という教訓も取り上げた。今回は、ベテランの課長が感情をむき出しにすることで、部下をしらけさせてしまうケースを紹介したい。

 

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第10回の舞台:ウェブサイト運営会社

ニュースを中心としたウェブサイトの企画・運営をするIT企業(社員数300人)

 

感情をむき出しにする上司 内心冷ややかな部下たち

 「……」

 販売促進課の女性課長の浜田(53歳)は数分間、黙ったままだ。顔は青ざめ、手がかすかにふるえている。怒るときの表情だ。横に座る2人の部下の女性もそれに合わせて黙る。一触即発の緊迫した雰囲気になる。

 1メートル前に座る営業課長の隈元(46歳)が、現在の販売促進策について浜田と議論し、言った。「もっと広い視野で判断してもらわないと、営業としては困るよ」。

 浜田は、この言葉で冷静さを失った。同世代の男性社員からは「瞬間爆発タイプ」「激高型」として敬遠される。20代の頃から、少しでも意にそぐわないことがあると、感情をむき出しに反論してきた。30代前半で結婚し、一時期は落ち着いていたが、40代以降、再び、感情を露骨に表すようになった。

 営業企画、総務、経理、販売促進と渡り歩き、仕事に情熱的に取り組むことで知られる。しかし、極端に勝気な性格が災いし、敵を作り続けた。歴代の役員たちからも「仕事はできるが、あまりにも感情的すぎる」と評価は悪い。同世代の中での昇格は遅いほうで、40代後半でようやく課長になった。

 現在の販売促進課は部員が6人のうち、女性が4人。20∼30代の女性たちのよき先輩ではある。面倒見もいい。しかし、特に他部署の男性社員との議論になると、“勝たないと気が済まない”ようだ。途中にインターバルを挟みつつも、何日も議論を続ける場合すらある。その姿を女性の部下たちは怪訝そうに、上目づかいで見ている。

 「私はねぇ、あなたたちのために(男たちに)強く言ってあげているのよ…」

 女性の部下たちは軽く頷くしぐさを見せるが、心は冷やかかである。上司の本音を見透かしているようだ。

 「男とか、女という前に、課長自身が感情をむき出しにするから、みんなからウザイと思われてんじゃない?」

 女性の部下たちは裏ではこんな話をしながら、浜田のよき部下を演じる。こうして建前と本音が錯綜する、うわべだけはまとまった職場となっていく。

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