誰でもデザイナーになれる ユニクロ「UTme!」にアパレル業界が駆逐される理由
ネタ切れのアパレルビジネスで次に何が起こるか?
しかも、最新のタブレットはペンシルがついていて、当時のようにマウスなど使わなくとも、まるで筆で紙に描いているように絵が描けてしまう。新しい技術など学ぶ必要なく、綺麗な写真や風景画やイラスト、頭に思い描いたコンセプトチャートをコミカルにし、Tシャツをつくって遊ぶことができる。このUTme!に慣れてしまうと、私のようにデザインに自信があると勘違いした人間は既成の服など買わなくなる。UTme!は今では、Tシャツだけでなくトートバッグ、パーカーなどバリエーションも増えて少しづつだが進化をしている。
一旦話を変える。
私は、職業柄、幾度かテレビ番組などに出演したことがあるが、その大がかりなセットや、事前の入念な打ち合わせは恐ろしいほどだ。しかし、手をかけたからといって面白いものができるかというとそうでもなく、むしろ、最近ではGO pro(小型映像カメラ)などで自撮撮影し、YouTubeで、そのへんのテレビに負けないぐらいおもしろい番組をつくっている人が多く、情報価値もテレビよりも早いし、なにより面白い。
最近はテレビといえばグルメかお笑い芸人ものばかり。内容は見ないでも分かるものの繰り返し。だから私のように、NetflixやYouTubeばかりみている人も多いように思う。今は、数万円の投資とパソコンがあれば、個人の持っている能力を簡単に世界に向けて発信し、表現者になれる時代だ。すでに、映像や文章の世界はそうなっている。従来のテレビや雑誌のようなオールドタイプのビジネスは色々な制約があるため、こうした卓越した個人の手軽な発信によってコンテンツ勝負で負けるのでは無いかと感じることが多い。
卓越した能力を持つ個人によって、“プロ”が駆逐されるという現象は、実はアパレル・ビジネスでも共通する話だ。毎日のように何万枚、何十万枚も新しい商品が生み出されるなか、それを分業化された組織の中で、サラリーマンが永続的に斬新なものを世に出し続けられるはずがない。人間というのは、集団になればなるほど定型処理が得意となり、応用が苦手になる。だから、組織というものは大きくなればなるほど硬直化するのだ。
当然ながら、この流れは、他人のモノマネに終始し価格競争に陥っているアパレル業界を機能不全に陥れている要因の一つだ。ようは、ネタ切れなのである。次回はこうした流れのなかで将来起きうる大きな変化について論じてみたい。
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プロフィール
河合 拓(事業再生コンサルタント/ターンアラウンドマネージャー)
ブランド再生、マーケティング戦略など実績多数。国内外のプライベートエクイティファンドに対しての投資アドバイザリ業務、事業評価(ビジネスデューディリジェンス)、事業提携交渉支援、M&A戦略、製品市場戦略など経験豊富。百貨店向けプライベートブランド開発では同社のPBを最高益につなげ、大手レストランチェーン、GMS再生などの実績も多数。東証一部上場企業の社外取締役(~2016年5月まで)