落日のGMS その3イトーヨーカドー改革のゆくえ
本部?店舗?仕入れの権限はどこに?
イオンが地方分権を推進したはじめたのと同時期の14~15年ごろから、イトーヨーカ堂も「過去のチェーンストア理論から脱却する」として、全社一律の商品政策(MD)をはじめとした従来型チェーンストアの慣習を排除し、独立運営店舗の導入を試みた。各店舗に仕入れなどの権限を与え、店舗独自の商品政策を展開できるようにしたのだ。ハード面のリストラだけでなく、ソフト面でも変革を図ったのだ。
しかし、この各店仕入れは、企業文化も従業員の練度も組織の大小も影響するため、簡単にできるものではない。一部報道によれば、分権化により仕入れコストが逆にアップしてしまい、16年には地域ごとにあった仕入れ機能を再び本部に戻してしまっているという。
地域のニーズと商品・価格とのミスマッチが販売不振の原因だとすれば、テナントを導入して自前でとらえきれないニーズを獲得するという戦略は理解できる。ただ、店舗の権限を再び本部に戻すなかで、改めて地域ニーズに合わせた店づくりをどうやって実現するかが、課題となろう。
イトーヨーカ堂は19年2月期も最終損益が78億円の赤字。これで5期連続の最終赤字であり、依然苦境にあることに変わりはない。「変化対応」をスローガンに掲げるセブン&アイにあって、ヨーカ堂がどのように、そしていつ変化対応を緒に就けるかは課題のままだ。
こうした状況を打開するためか、セブン&アイは現在、新型スーパーの出店準備が密かに進めている。東京・品川にオープンする「フォーキャスト」と名付けられたこの新型スーパーは、イトーヨーカ堂でもヨークマート(東京都/大竹正人社長)でもなく、まったく別の法人であるフォーキャスト(東京都/有坂順一社長)が運営を担う。同店のオープン予定日は8月上旬。生鮮食品や総菜などを中心とした食品スーパーになる見通しで、コンビニと大型食品スーパーの“隙間”を埋める業態になると見られている。
しかし、イトーヨーカ堂にはすでに「食品館」という食品スーパー業態があるほか、傘下のヨークマートも首都圏で店舗展開している。にもかかわらず、別法人で運営するのはなぜか。イトーヨーカ堂やヨークマートのような従来のスーパー運営のやり方に染まっていない、新しい組織、新しい店舗をつくりたかったからではないか、と筆者は考える。従来とはまったく違ったアプローチによる新型店は、ヨーカドー改革のカンフル剤となるか――。(次回に続く)