『ZOZO離れ』が止まらない本当の理由は、ブランド毀損でなくビジネスモデルにあった
ZOZOだけが儲かるビジネスモデル
ブランド力無きアパレルが安売りされるのは必然
まず、本連載で繰り返し述べているよう、日本のアパレルは、小売り(川下)とそれ以外(川中、川上)が分断され、“製販統合の権化”といわれているユニクロでさえ、自家工場は持っておらず、多くが協力工場だ。ユニクロは実にうまく工場をマネジメントしているため資本関係など無くとも自家工場を持つアパレルより上手に生産コントロールをしている。
アパレル企業の工場というものは、例えばニット製品の工場ならニット製品しか作れないので、トレンドが布帛に変わり、売場が布帛を中心に組み立てたてられたら、工場稼働率を上げられなくなる。したがって、取り扱っている商品がファッション型であればあるほど、売上のボラティリティ(変動)が大きくなり、予測が困難となる。
つまりユニクロのように、商品を定番に絞り込み、ヒートテックのような「渾身の一作」を中長期にわたって作り続けるようなモデルでなければ、生産工場の内製化はアパレルにとってリスクとなるわけだ。実際、特定のアパレルの多くの協力工場が競合他社にも商品供給をしており、また、蛇足となるが、それらの知的保全も野放図な状況だ。もう、「真似をしてください」と言わんばかりの業界だ。実際、秋冬ものが始まる8月になると、アパレルはこぞって中国やASEANに出張にゆく。競合がつくっている商品を丸裸のままコピーするだめだ。なんのための自家工場かという点についての戦略と議論が見えないというのが現状なのである。
話をZOZOに戻すと、日本には「三方良し」という言葉があるが、ZOZOのビジネスモデルはここを外していた。例えば、ZOZOのビジネスモデルは、ZOZOだけが儲かって、リスク(主に在庫)はベンダーにヘッジされる構造になっている。まず、ZOZOは商品仕入をしない(ここでは、一旦、プライベートブランド<PB>や一部の例外商品についての話は置いておく)。良くいえば、超優良ファッション好きの顧客基盤をベンダーに対して開放し、「売場」を貸してベンダーの売上向上に貢献しているともいえる。
しかし、これは1980年代後半の百貨店のやり方と全く同じで、あえて悪い言い方をすれば、「我々の顧客に販売をさせるから家賃を払え」というやり方と違わない。小売企業は在庫リスクを持たず、売上を上げれば、その売上に応じて家賃(見合い)をベンダーに請求できるから、神の見えざる手によって、こうした構造によって小売企業は必然的に「安売り」をすることとなる。
日本のアパレルは差別性が無いから、似たような商品があれば安い方が売れる。だから、売上を上げようと思えば、極論を言えば、小売企業は、あの手この手で安売りをすればよい。ZOZOに出店している企業数は1000を超えるから、消費者にとっても利便性は高い。だから、安売りをすればするほど売上は上がり、その売上に応じて手数料をアパレルから頂けるからZOZOだけが儲かる。
一方、供給者であるアパレルはたまったものではない。彼らは仕入れをしているわけだから、値引き販売を小売側が行い、家賃(見合い)を取られれば業績が悪化するのは当然だ。サステイナブル(持続可能)なビジネスとは、バリューチェーン全体がフェアに利益を配分し合う関係が成立しあうものだ。これが、私がいう構造上の欠陥である。
次回、さらにZOZOについての考察をすすめてゆく。そもそもなぜ、ZOZOだけが儲かるビジネスモデルを、アパレル企業は受け入れてしまったのだろうか? そこにはアパレル業界特有といってもよい論理的思考の弱さと感覚
プロフィール
河合 拓(事業再生コンサルタント/ターンアラウンドマネージャー)
ブランド再生、マーケティング戦略など実績多数。国内外のプライベートエクイティファンドに対しての投資アドバイザリ業務、事業評価(ビジネスデューディリジェンス)、事業提携交渉支援、M&A戦略、製品市場戦略など経験豊富。百貨店向けプライベートブランド開発では同社のPBを最高益につなげ、大手レストランチェーン、GMS再生などの実績も多数。東証一部上場企業の社外取締役(~2016年5月まで)