少子高齢化による人手不足が小売業の課題となっている。株式会社エクサウィザーズは、そうした課題の解決に、生成AI等のテクノロジーを活用したプロダクト・サービス等の企画・開発・販売により企業の生産性向上を提供する。今回は、同社から見た小売業の課題や今後の展望を紹介する。
小売業は、人手不足の解消にむけた業務の効率化が急務
最近の小売業では、労働生産人口の減少による人材不足をいかに解消するかが課題となっている。さらに最近では、消費者の嗜好が多様化していることから、本社から画一的な指示を待つよりも、現場でよりスピーディーに意思決定をする重要性も高まっているという。人手不足でありながらも、現場で顧客中心の意思決定を素早く実施するためには、デジタルや生成AIを活用した業務の効率化が急務である。
常務取締役の大植択真氏は、「最近の小売業では、文章の作成や、店舗戦略を練ることに生成AIを活用するケースが増えています。例えば、これまでファックスや電話といった昔ながらの手法で各店舗と連携を図ってきた企業では、生成AIを活用して現場のレポートを作成するだけでも業務の効率化になるでしょう。」と語った。
生成AIの活用で業務の効率化が可能になる
エクサウィザーズでは、自社データの連携(RAG:独自の情報を組み合わせることで生成AIの精度を向上させる技術のこと)も可能な法人向けChatGPT「exaBase 生成AI」を提供する。生成AIの導入では、セキュリティを気にする企業も多いが、同社では「機密情報ブロック機能」などを搭載し、大企業でも安心して使えるセキュリティを提供している。また、「ChatGPTに質問しても、一般的な事しか回答してくれない」などの悩みに応え、社内外のデータを取り込み、カスタマイズされた生成AIを利用することで、生産性アップのための様々な機能と手厚いサポートが受けられる。
さらに、通常のChatGPTを利用するより低価格なため、利用コストの抑制も可能となっている。現在までの導入社数は550社を超え、業界トップクラスの50,000超ユーザーが利用しており、小売業、メーカー、金融機関、自治体と業種を問わず活用できる汎用性の高さも特長のひとつだ。
代表的な小売業では、イオン株式会社がデジタル人材育成プロジェクトである「イオンデジタルアカデミー」の活動の一環として、グループ全業態90社・約1000人で利用を開始した。個々の活用だけでなく、利用者同士が教え合い、助け合いながらスキルを向上させていく組織文化を醸成するため、専用の「コミュニケーション掲示板」も設置し、最新の生成AI技術の動向、便利なプロンプト(生成AIへの指示のこと)や失敗事例などについて、情報交換を実施している。実際に、「掲示板の情報が業務に役立った」などの報告が複数寄せられているという。
利用者のAIリテラシーを向上させるため、初級・中級・上級とレベル別の勉強会も定期的に開催し、生成AIを試用しながら、業務の生産性向上や事業に役立つ有効な生成AIの活用方針の創出などにつなげていくことを目指しているという。
生成AIを一時的な導入で終わらせず、定期的な講習会などの場を設け、定着化させることも重視している。2024年5月に実施した同社の調べによると、生成AIの個人の業務への利用は、日常的に使用する割合が35.8%まで向上しているものの、組織内での利用率の向上は重要課題となっており、利用率が「3割程度の社員」および「ほぼ使われていない」が約7割との結果となった。今後、生成AIの活用先進企業と、活用が進まない企業との成果面での差が出てくる可能性があるという。
その他にも、録音・録画データをいれるだけでIR取材に特化して構造化された議事録の自動作成ができる機能などを搭載した、生成AIの技術でIR部門でのデータ活用を促進する「exaBase IRアシスタント」、担当者の能力・知識・経験に左右されずに求人票を自動作成する機能などを搭載した採用領域の業務効率化を支援する「exaBase 採用アシスタント」など、業務に特化したサービスも提供している。
月間約3万3000時間(約206人月)を実現する店舗に特化した「exaBase 生成AI for 店舗」を開始
2024年9月から、小売をはじめとした店舗を構える業界に特化した「exaBase 生成AI for店舗」の提供を開始する。従来の「exaBase 生成AI」を導入した小売業において、平均業務削減時間が月間約3万3000時間(約206人月)を実現。生み出した時間を付加価値の高い業務に充てるなど、生産性の向上に寄与している。「exaBase 生成AI for店舗」では、これまでの活用事例やフィードバックによる知見をもとに、非正規従業員の教育や外国人のお客様向けの多言語対応など、より店舗業務特有の課題に適したサービスを提供する。
また、今後は、利用していく中で精度が向上していくカスタマイズAIともいえる領域の更なる強化にも取り組む予定だ。従来の「exaBase 生成AI」と生成AIおよび人材育成サービスである「DXアセスメント&ラーニング」のサービスを組み合わせるなど、総合的なサービスを提供していくことで、顧客への付加価値の最大化を目指していく。
大植氏は、「最近では、マルチモーダルと言って、テキスト・画像・音声・動画などの複数のデータを一度に処理できるAIの技術も普及してきています。今後は、スマートフォンから写真をとるだけで報告書が完成するような、より新しい技術を用いたサービスの提供も考えられます。今後も生成AIの活用により、顧客の経営課題の解決を支援するサービスを提供していきます」と話してくれた。